だが、EVはすでにテスラモデルS・モデルX・モデル3やリーフなど高性能モデルが大量生産されているステージにある。市川市として描くEV政策では、「市川市でのEVの在り方」が基盤にあり、そこに総括的なエネルギーマネージメントの議論が加わるべきだ。
ちなみに、こうした考え方をホンダはeMaaS (イー・マース:エネルギー循環社会とモビリティ・アズ・ア・サービスの融合)として、7月上旬に一部メディア向けに行った先進技術説明会「ホンダミーティング」(於:埼玉県和光市)で公開しており、今年度から本格的な社会実装を行うとしている。
総括的なエネルギーマネージメントを踏まえたEVの社会実装は、遠い未来のことではないことを、村越市長、市川市職員の皆さん、そして「いちかわ未来創造会議」に参画する皆さんにはぜひともご理解いただきたい。
付け加えるならば、日本では今後もEV普及はこれまで通りのスローペースが維持される見込みだ。これは、先日の「ホンダミーティング」での本田技術研究所役員の発言であり、自動車産業界として大筋合意すると筆者はみる。
なぜならば、日本政府は当面、EVなど電動車の販売台数義務化の法整備をする可能性が低いからだ。
ここ数年の世界的なEVブームは、2016年の独フォルクスワーゲングループのEVシフトというマーケティング戦略を起点としたものだ。そこに、中国の新エネルギー車(NEV)規制と欧州CO2規制をクリアするため、日系を含めた各社がEV量産を強化している。こうした一部のマーケティング戦略と「規制ありき」だけでは、EVが大衆車として自立できる状況にないと考える自動車業界関係者が多い。
また、村越市長は今回の会見で、政府が先に閉会した通常国会で法案通過を目指したがいったんは廃案とした「スーパーシティ構想」についても、市川市としての今後の参画の可能性を示唆した。

良くも悪くも、大きな話題となってしまった市川市のテスラ問題。
これを契機に、全国各地で改めて、EVの本格的な社会実装の可能性、そして循環型エネルギー社会の実現に向けた現実解を考える機会が増えることを願いたい。
(ジャーナリスト 桃田健史)