精神障害を持つ当事者を主体に、誰もが地域で充実した暮らしを営める社会を実現するために活動してきた、「認定NPO法人地域精神保健福祉機構(コンボ)」という千葉県の団体がある。コンボは取材に対して「精神疾患のある人が事件に関与した場合、事件と精神疾患に関連性があるのかどうかが定まっていない時点でメディアは病歴を報じ、その内容がSNSで無軌道に拡散してしまいます。この状況を、大変憂慮しております」と答えた。

 事件の翌々日にあたる7月20日、コンボは今回の事件報道に関する見解と、精神疾患を持つ当事者たちへのメッセージを公表している。

 見解では、精神疾患という病歴を報道すると、事件の原因や動機という印象を与えたり、精神障害者は危険という偏見を助長したりすることが「過去の例から見て明らか」とされる。メッセージでは、怖れから外出もままならない辛い時間を乗り切るための知恵や、理解者や仲間に思いを受け止めてもらうことの重要性など、具体的で有益なアドバイスが並ぶ。身近に理解者や仲間がいない人々のために、思いを吐き出すフォームも設置された。

 しかし、過去とは異なる成り行きも見受けられる。コラムニストのオバタカズユキ氏は、事件直後から「精神疾患と犯行を安易に結びつけないで」という注意喚起の声がSNSのあちこちに上がったのを発見し、「嬉しい誤算」「この世の中もまだまだ捨てたものじゃない」と思ったという(『NEWSポストセブン』記事による)。重大事件のたびに、悲しみや怒りや憤りを受け止めてきた私たちは、私たちそれぞれの力で、社会を緩やかに成熟させているのかもしれない。

「精神障害者だから重大犯罪」
データに見るその信憑性

 まず、「精神障害者だから重大な犯罪を起こす」という事実はあるのだろうか。

『平成30年版犯罪白書』をもとに、2017年の刑法犯と精神障害者による犯罪を整理したものが、以下の表だ。検挙された事件に対して、検挙された人のうち精神障害者等(知的障害者を含む)とその他の人々の比率を、「全犯罪」「殺人」「放火」「殺人+放火」「殺人と放火を除く」のそれぞれに対して求めたものだ。