事業はまだ生きている!

 そもそも債務超過の会社は、買い手企業にとっては手を出しにくい対象ではあります。
ただ、債務超過に陥った理由が明らかで、かつ現在の事業が黒字化しているのであれば、相手先が見つかる可能性は十分にあります
 もちろん、限度はあります。毎年の営業利益の10倍を超えるような債務超過は厳しいかもしれません。しかし、数年程度、最大でも5年程度で債務超過が解消される見込みがあり、事業そのものが堅実で取引先も継続していて、従業員のモラルの低下が起こっていなければ、通常の会社と同じように売却はできます。ポイントは事業が生きているかどうかです。

 そこで、まずは債務超過の内容を精査するところから始めました。
 リーマンショック後に納品先の倒産が相次ぎ、回収不能な売掛金が発生したり、プロジェクトが中断されたりして、収入面での著しい減少が起こります。しかし、社長の人柄もあり、外注先に対して予定期間通りの契約を継続したことから、収入を支出が大幅に上回ってしまう事態に陥り、大きな赤字が生じたようです。

 これを教訓に、プロジェクト期間の細分化、短期化を進めるとともに、外注先との契約期間の短縮化にも取り組みました。貸し倒れリスクを最小限に抑えるため、取引先の与信調査の厳格化も行い、業績が回復すると同時に黒字が恒常化しました。

 当時の外注先とのやり取りの誠実さ、社長自ら報酬を抑えて何とか踏ん張ろうとしている姿から、取引先も継続して案件を発注し、事業は回っています。

 一方、銀行は債務超過である点、収益水準に対して借入過多となっている点からこれ以上の追加融資には応じられない状況でした。倒産を避けるため、リスケに応じるのが精いっぱいです。

 仕事の依頼は引きもきらず、運転資金の追加借入さえできれば事業を伸ばすことが可能です。ところが、銀行が対応できず、社長本人にも資金的な余力がないため、そのチャンスを活かすことができません。資本力のある会社の傘下に入れば、事業が伸びるのは間違いない状況です。