言うべきことを言うほうが
オペレーションはうまくいく
自分たちは売り手企業だからバトンを渡すだけ、先のことはバトンを受けた買い手企業が考えればいい。そういうわけにはいきません。買い手企業が自分たちの未来がどうあるべきかを考えるためにも、(売り手企業は)自分たちの思いを伝えないと、幸福なM&Aにはなりません。よく考えてみてください。
自分の息子や娘が後継者になることを望んでいたとして、事業を承継するときに「じゃあ、あとはうまくやっといて」と言うだけで、丸投げして終わりでしょうか。
「俺の時代は終わったから、若い人に任せる」
「こんな老いぼれが考えることではない」
そんな事業承継はありません。もちろん、最後の最後は「ここからは、お前次第だ」とバトンを渡すことになりますが、その前に何年にもわたって、実質的なデューデリジェンスを一緒に行っていくはずです。第三者に手渡すM&Aだからといって、その姿勢に違いがあるわけではありません。
大切な従業員のこと、手塩にかけて育んだ商品のこと、買い手企業の福利厚生が受けられるのか、新しい商品開発にチャレンジできるのか、買い手企業のリソースが使えるのか、買い手企業の情報を共有できるのか――。
遠慮なく伝え、遠慮なく聞かないと、このような大事なことがないがしろにされてしまうかもしれません。経験上、言うべきことは言い、聞くべきことは聞いたケースのほうが、承継後のオペレーションはうまくいっています。
波風が立たない売却を「円満なM&A」とは言いません。
真の円満なM&Aとは、契約成立を最終目標とはしません。売却した事業が中長期的に成長し、従業員の満足度も高まる。それが円満なM&Aの定義です。侃々諤々の議論を恐れては、円満なM&Aは実現できません。
※次回は、M&Aを検討するのは早いに越したことはない理由についてお伝えします(8月5日公開予定)。