日本も顔負けの「起業小国」でスタートアップ

 1つ目は、彼らが、起業小国(裏を返せばサラリーマン大国)フランスで起業したということだ。

 下図1は、起業動向に関する国際比較GEM(グローバル・アントレプルナー・モニター)のデータだ。ロンドンビジネススクールのグローバル・アントレプルナーシップ・リサーチ・アソシエーションが毎年実施するものだ。これによると、フランスの起業家率(18~65歳人口のうち、起業準備または起業後3年6ヵ月以内の事業所を所有・経営する人の数の割合)は5.18%だ。G20加盟国中、イタリア、日本、ドイツに次ぎ低い数値となっている(マクロン大統領が進める起業環境整備策により、今後これが上昇する可能性もあるが)。

図1:起業家率の国際比較(単位%) 出所:GEM(2014~18年の各国公表データを筆者が平均値化) 拡大画像表示

 フランスで起業家が少ない理由は2つ考えられる。1つは、日本人と似てリスクを避けたがる国民性だ。これはオランダの社会心理学者ホフステードの国民文化比較研究の1つ「Uncertaity Avoidance Index(不確実性の回避インデックス)」でも説明できる。これは不確実なことや新しいことを避けたがる程度を示す国際比較指標だが、フランスは日本同様に高い数値となっている。

 2つ目は、サラリーマンでいることが比較的に心地よいからだ。例えば、最低賃金は日本の1.5倍、簡単に首は切られない。また、経営者も含めライフ・ワーク・バランスや個人の権利を大切にするため、残業も少なくバカンスもほぼ100%とれる。

日本と真逆の早期リタイアメント大国で高齢起業

 下図2は、国際労働機関(ILO)が公表する年代別の労働参加率を2つの高齢者層に絞り先進7ヵ国で比較したものだ。つまり、各年代人口に対する働く人の割合だが、先進7ヵ国中、フランスが55~64歳で約55%、65歳以上で約3%と最も少ない。参考までにフランスの25~54歳の労働参加率は87.6%(日本の86.7%より高い)であり、55歳を過ぎるとリタイアメントする人の割合が高いことがわかる(現在、マクロン政権が進めるリタイアメント改革により、その割合は減る可能性があるが)。

図2:高齢者労働力率の国際比較(単位%) 出所:国際労働機関(ILO)(2018年の年代別データから先進7ヵ国を抜粋) 拡大画像表示

 この低い高齢者就業率には大きく2つの理由がある。1つは文化的な理由だ。フランス人がよく口にする言葉の1つに、「プロフィト・ドゥ・ラ・ビー(人生を楽しもうじゃないか)」がある。30~40年も働いてきただのだから、残りの人生をのんびり楽しもうということだ。2つ目は、社会構造上の理由だ。先進国の中では公務員比率、出生率、公的年金額ともに比較的高い。また家屋などの資産も長持ちし価値も安定または上昇するので、ストック経済が家計を支える割合が高いということがあるだろう。