「企画プレゼンが通らない」「営業先の反応が弱い」「プレゼン資料の作成に時間がかかる…」など、プレゼンに関する悩みは尽きません。そんなビジネスパーソンの悩みに応えて、累計25万部を突破した『社内プレゼンの資料作成術』『社外プレゼンの資料作成術』シリーズの最新刊『プレゼン資料のデザイン図鑑』が発売になりました。この連載では、同書のコンテンツを紹介しながら、著者・前田鎌利氏がソフトバンク在籍時に孫正義社長から何度も「一発OK」を勝ち取り、ソフトバンク、ヤフーをはじめ約600社に採用された「最強のプレゼン資料作成術」のエッセンスをお伝えします。
早速ですが、この約30秒の動画をご覧ください(お急ぎの方は、この動画だけご覧いただいてもポイントを把握いただけます)。
いかがでしょうか?
改めて、NG資料を見てみましょう。
これは、A3用紙1枚にまとめた社内提案書です。みなさんもご存知のとおり、社内プレゼンにパワポなどを使わず、提案内容をA3用紙1枚にまとめることを義務付けている企業もたくさんあります。一覧性が高いために、これも非常に効果的な手法だと思いますが、上図のように、A3用紙という限られたスペースに要素を詰め込みすぎると、ポイントの掴みづらい資料になってしまいます(正直、「読むのが面倒」と思ってしまいますね)。
最大の問題点は、文章を長々と記していることです。これでは、決裁者は文章を読み込む必要があるため、何がポイントなのかを瞬時に把握することができません。決裁者にインプットしたい箇所を波線や楕円の罫線で強調していますが、ほとんど効果がないと言っていいでしょう。わかりやすく”一発OK”を勝ち取れる資料にするためには、情報量そのものを減らして、決裁するために必要不可欠な情報のみを記載する必要があるのです。
ここでは、下図の赤枠で囲ったパーツについて改善してみましょう。
この資料は、「アジアにおける売上増施策について」提案するものです。アジアマーケットでの売上・利益減少という「課題」を示し、その「課題」を解決するために、人口ボーナス期にあるインドネシアへの生産拠点の移行を提案。そのために必要な「費用」と「利益予測」を提示しているわけです。
赤枠のパーツは「アジアマーケットでの売上・利益減少」という課題を伝えるのが役割ですから、伝えるべき最重要ポイントは、下図の赤字の部分です。すなわち、「(アジアマーケットでの)売上が対前年比80%」に落ち込んでいることと、「利益率10%に減少」と下降トレンドにあることの2点です。2つのグラフも、それに対応したものになっています。
であれば、この2点が明確に伝わるように情報を整理するべきです。私ならば、下図のように加工します。
主な改善ポイントを以下に列挙します。
1 このパーツの見出しとして「課題:売上・利益率減少傾向」を明記。「このパーツで何を伝えるのか」を明示することで、決裁者は内容を把握しやすくなります。
2 グラフとメッセージを最も素早く認識できる「左グラフ、右メッセージ」の形に変更。
3 「ポジティブ・メッセージ=青、ネガティブ・メッセージ=赤」にすると、決裁者は「いい情報なのか? 悪い情報なのか?」を把握しやすくなります。ここでは「売上・利益ともに減少」というネガティブ・メッセージなので、数字とそれに対応するグラフのパーツを赤色に変更。
この要領で、他のパーツも改善したのが下図です。
いかがでしょうか? 格段にわかりやすい資料になったのではないでしょうか?
繰り返しになりますが、A3用紙一枚に提案書をまとめると一覧性が高まることもあり、決裁者の意思決定を最速化できる利点がありますが、冒頭のNG資料のように文章をびっしり書き込んでしまうと、その利点が減殺されてしまいます。
「決裁するために必要な情報は何か?」をしっかりと考え抜き、その要素だけに情報を絞ったうえで、それを一瞬で認識できるデザインで表現するようにしてください。それだけで、あなたの提案の採択率が劇的に向上するとともに、会社の生産性もおおいに高まるはずです。
1973年福井県生まれ。東京学芸大学卒業後、光通信に就職。「飛び込み営業」の経験を積む。2000年にジェイフォンに転職して以降、ボーダフォン、ソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)と17年にわたり移動体通信事業に従事。営業プレゼンはもちろん、代理店向け営業方針説明会、経営戦略部門において中長期計画の策定、渉外部門にて意見書の作成など幅広く担当する。
2010年にソフトバンクグループの後継者育成機関であるソフトバンクアカデミア第1期生に選考され、事業プレゼンで第1位を獲得。孫正義社長に直接プレゼンして数多くの事業提案を承認されたほか、孫社長が行うプレゼン資料の作成も多数担当した。ソフトバンク子会社の社外取締役や、ソフトバンク社内認定講師(プレゼンテーション)として活躍したのち、2013年12月にソフトバンクを退社。独立後、『社内プレゼンの資料作成術』『社外プレゼンの資料作成術』『プレゼン資料のデザイン図鑑』(ダイヤモンド社)を刊行して、ビジネス・プレゼンの定番書としてベストセラーとなる。
ソフトバンク、ヤフーをはじめとする通信各社、株式会社ベネッセコーポレーションなどの教育関係企業・団体のほか、鉄道事業社、総合商社、自動車メーカー、飲料メーカー、医療研究・開発・製造会社など、多方面にわたり年間200社を超える企業においてプレゼン研修・講演、資料作成、コンサルティングなどを行う。