しかし、ブラジルはその「正解」に飛びつかず、問いを立てた。「誰一人、見捨てないためには、どうすればいいのか」。その後、国を挙げて治療薬を無料で配布。人々に検査を促し、予防の知識を国中に広めていった。その結果、感染率はわずか0.6%となり、エイズと戦う発展途上国の見本となった。

◇例外から見える問題の本質

 物事の本質を見極めるためには、「例外」に着目して帰納法を用いることが有効となる。1990年、ベトナムでは、約3分の2の子どもたちが低栄養に苦しんでいた。この状況を改善するために、「セーブ・ザ・チルドレン」から派遣されたジェリー・スターニンは現地に降り立った。スターニンは、ベトナム政府に歓迎されておらず、6ヵ月で成果を出さなければ帰国してもらうと告げられる。

 一見すると低栄養の原因は貧困であり、6ヵ月で解決することはほぼ不可能に思えた。しかし、スターニンは、「非常に貧しい家庭にいるのに栄養状態が良い子ども」という、例外的な事例に着目した。そこから「食事の前に手を洗っていた」「水田でとれるエビやカニを食べていた」という、共通する法則を見出したのだ。こうした知見をもとに、母親向けの2週間のプログラムを作成・実施した。すると、劇的な効果が見られ、プログラムはベトナム全土に広がり、2年間で低栄養は85%も減少したのだった。

【必読ポイント!】
◆一流の人の考え方
◇イノベーションを生み出す思考法

 世の中には、2種類のタイプがいる。1つは、すでに得られている定説を参照して答えを求める「では派」である。それに対して、「△△とは何か?」と問い続ける人たちは、「とは派」と定義される。もちろん、どちらがより優れているかという話ではない。だが著者は、どういう生き方をしたいかと自問し、「とは派」になりたいと心に決めた。

 著者は、ある著名な物理学者の言葉に感銘を受けたことがある。「イノベーションの種となる適切な問いは、『大きな視点』と『小さなディテール』を高速で行ったり来たりすることでしか生まれない」