なぜ企業の教育支援が
学びにつながらないのか?

 ただ、民間の力が重要だからといって、自社の知識や成果を単に提供すればよいというわけではない。学校には、指導カリキュラムがある。また、一口に小学生といっても、1年生と6年生では理解能力や関心の高いテーマも異なる。適切なタイミングで、適切なコンテンツを提供することが重要だ。

「これまでは企業側は学校の事情を把握しておらず、環境保護活動の成果など自社がアピールしたいことを伝えるだけ。学校側もどんなコンテンツを提供してもらえればいいのかわからない」(若江氏)ため、肝心の教育の成果につながらないといった問題が大きかった。

 例えば、理科の学習であれば、ある程度基礎の学びがあったうえで、実践的な段階として授業で学んだ物質を使用して製品を作っているメーカー社員が講義をするといったように、あらかじめ企業と学校が学習の目的と提供すべきコンテンツの内容をすり合わせておく必要がある。このとき、歩み寄りができるのは、企業側であると若江氏は言う。

「企業にはマーケットインの発想で、顧客のニーズに合わせて商品やサービスを提供するノウハウがあります。教育現場の現状や求められるコンテンツを理解したうえで支援をすることは、理論上可能だと思います」

 そこまでとことんやるためには、やはり経営戦略として投資していかなければならない。教育支援にかかる費用を、社会貢献活動のために毎年一定額かかる“コスト”と考えているのでは、本腰を入れて取り組むのは難しい。未来に向けて必要な投資だと考える「トップのコミットがあるかどうか」(若江氏)が鍵となる。

本気の企業は教育支援を
CSRではなく、HRと考える

 企業には、先述のESG、SDGs以外の観点から教育支援に投資すべき大義名分がある。それは、人材育成だ。少子高齢化が進み、人手不足は企業にとって重要課題の1つ。今は子どもでも、数年後、十数年後には、貴重な人材候補になりうる。

 こうした背景から若江氏は、教育支援活動に「経営戦略としてHR部門が積極的に関わるべき」だと語る。

「“未来の人材”育成だと考えれば、自社はどういう人材がほしいかという観点から、コンテンツを提供することができます。そうすることで、結果的に質の高い教育支援を実現できるのです」