早食いイメージ写真はイメージです Photo:PIXTA

 その昔「早飯、早糞、早○○(○○は諸説あり)」は勤め人のたしなみ、とされた時代があった。しかし、少なくとも早飯はやめた方がよいようだ。

 福島県立医科大学の研究グループは、27都道府県から集めたおよそ20万人分の特定健診のデータを使い、「週に3回以上、朝食を抜く」「週に3日以上、夕食を摂るのは就寝前の2時間以内だ」「週に3日以上夜食を摂る」、そして「周りの同世代よりも早食い」という4つの食習慣と糖尿病発症リスクとの関係を解析。その結果、「早食い」が最も強力な糖尿病発症のリスク因子であることがわかったのである。

 2008年の登録時点で非糖尿病だったおよそ20万人(平均年齢63.7歳、男性38%)の参加者のうち、09~11年の追跡期間中に7032人が糖尿病を発症。

 この新規発症者と非発症者の食習慣について、体重や血圧、喫煙の有無など、その他のリスク因子の影響を調整して調べたところ「早食い」のみが有意に糖尿病の新規発症と関係していたのである。

 ちょっと驚くのは、一般常識に反して、毎日お酒を飲む習慣が糖尿病の発症予防に働いていたことである。ただし、適切な飲酒量は不明だ。ちなみに厚生労働省のいう「節度がある適度な飲酒」はビールのロング缶1本/日、日本酒1合弱/日までである。

 そのほか「早食いの人は、(1)比較的若く(平均年齢61.6 vs. 64.1歳)、(2)男性、(3)体格指数が高い(24.2 vs. 22.5)、(4)20歳時点から10kg以上、体重が増えている、(5)この1年間で体重が3kg以上、頻繁に変動している」などの特徴が判明した。

 そもそも、なぜ早食いが糖尿病リスクなのだろう。本研究では、早食いは仕事のストレスによるもので、ストレス食いが過食や肥満につながるほか、本来「ゆっくりかんで食べる」ことで発生するはずの食事誘発性のエネルギー消費が低下し、肥満とひいては糖尿病発症につながると推測している。

 昨今、働き方改革のしわ寄せが社員の昼休みにきていると聞く。部下に早食いを強いて不健康経営にならないようご注意を。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)