Gさん夫妻が持っている冷暖房器具は、扇風機と赤外線ヒーター1台ずつだ。冬、夫妻は同じ部屋でヒーターの「そんなに暖かくない」(Gさん)温もりを分かち合って暮らしているという。他の部屋には暖房器具はない。トイレに行くたびにヒートショックのリスクが発生しそうだ。

 しかし、少なくとも年に2回訪問調査にやってくるケースワーカーは、生活環境を知っているはずだ。その可能性について尋ねると、Gさんは「もちろん知っていますよ、健康でも文化的でもないということを」と答えた。

 Gさんは、高橋留美子氏のコミック作品『めぞん一刻』の主人公・五代裕作とほぼ同年齢だ。不器用で世渡り下手な大学生だった五代青年は、保育の仕事に自分の天分を見出し、保父(現在の保育士)となり、憧れの人・音無響子と結婚した。Gさんは、五代青年と同様に、男性保育士の先駆けだった。

 しかし保育士の仕事には、特有の肉体的な負荷がある。子どもは小さい。保育園の子ども用の椅子やテーブルは、子どもに合わせて低い位置に置かれている。保育士たちは毎日、身体をかがめては起こす動作を、数え切れないほど繰り返すことになる。身長が比較的高い男性にとっては、より大きな負荷となる。20年後、Gさんは身体を壊していた。

高圧的なケースワーカー
エアコン設置を望むべくもない

 Gさんはその後、保育士として働いてきた長年のキャリアを生かして、学童保育の指導員になった。小学生なら身体が大きいから、保育園ほどの身体的負荷はないだろうと考えたのだった。午前中は地域の親子のための育児支援プログラム、午後は小学校帰りの子どもたちの学童保育というタイトな業務も、長年の保育園経験で巧みにマネジメントした。

 しかし、そもそも慢性的に時間が不足している業務を、10年間こなし続けた末、精神疾患で働けなくなり、約30年間の職業生活を休止せざるを得なくなった。妻も同様の経緯をたどり、働けなくなった。

 夏の暑さと冬の暑さだけでも、Gさん夫妻の日常的なストレスは多大なはずだ。そこに追い打ちをかけるのが、現在の若い担当ケースワーカーの横柄な態度だという。