日々、生活していれば、様々な感情が生じてくるのは誰しも同じ。長い人生、嫌なこともあれば、楽しいこともある。

 ただし、そうした気分をTwitterやFacebookに投稿したくても、「愚痴と思われたらどうしよう……」「浮かれていると思われるかな?」と躊躇してしまうことはないだろうか?

 そんな日々のストレスやワクワクした気分などを気軽にシェアすることのできるのが「胃さんと心臓さんのカウントダウン」。「伊藤信三さん」の体の中にいる「胃さん」と「心臓さん」が、あなたの抱える締切日や、待ち遠しい記念日までの時間をカウントダウンしてくれるサイトだ。

ユーザーの目標達成を支援してくれる「胃さんと心臓さんのカウントダウン」。応援してくれるのは、精神的に弱い「胃さん」と可愛い顔して腹黒い「心臓さん」。

 使い方は簡単で、任意のユーザー名とカウントダウンのタイトル(会議や課題提出日等)を記入し、日時を設定するだけでよい。カウントダウン画面では残り時間が表示され、「胃さん」と「心臓さん」のいずれかが、経過時間に応じて様々なセリフをつぶやいてくれる。「なにその予定?」といったツッコミもあれば、「締め切りまで時間あるから焼き肉いこうよ~」といった誘惑(?)もある。こうした“ゆるーい”会話を楽しみながら、カウントダウンの日までを愉しもうという狙いだ。

 同サイトを提供しているのは、「HotTwit」「鬼ツールズ」などのユニークなサービスを次々と立ち上げている株式会社スプール。ただしこの「胃さんと心臓さんのカウントダウン」を手掛けたのは、同社のインターン生だという。

「このサイトは数ヵ月前まで、WEBデザインやWEBプログラミングの実践的知識がほとんどなかったインターン生3名で企画し、制作しました。先輩社員の指導の下で、得意分野に応じて担当分けを行い、企画、Photoshopなどを利用した画像作りから、HTMLコーディング、プログラミングまでのすべてを行っています。ハードルは決して低いものではありません。ですがインターン生同士が限られた時間の中で話し合い、修正を重ね、先輩社員のチェックや指導を受けるなどのフォローをし合うことでリリースに至りました」(株式会社スプール 深浦朋重氏)

「胃さんと心臓さんのカウントダウン」の特徴は、TwitterやFacebookへの投稿機能を持ちつつも、それに縛られない“ゆるさ”にある。開発にあたったインターン生は、サイト開発のきっかけを次のように語る。

「近年では、電話・メール・SNSがどんどんカジュアルに使われるようになっています。今後はあらゆるものが SNSでシェアされ、気分までも共有されるようになっていくのではないか。その際に忘れてはいけないのは、“くだらないこと”が重要だということです。TVのバラエティ番組が、くだらないからこそ気楽に笑えるように、SNSでもくだらないネタや笑えるネタがシェアされることで、ユーザーは癒されるのではないでしょうか」

 たしかにある種の“くだらなさ”というのは、SNSが隆盛を極める時代だからこそ必要なものなのかもしれない。Facebookでの“いいね!”合戦は、ときに息苦しく感じられることもある。“SNS疲れ”がいっそう蔓延する時流を敏感に感じ取って、同サイトをインターン生が企画制作したという点に、現代性を見る思いがする。

 と同時に、企業がこうした若者の育成を後押しする姿勢にも着目したい。

「インターン生との関わり方は現在も模索中ですが、意欲のある学生や若者との相互にメリットのある関わりを通じて、社内の活性化や学びを促進するとともに、その育成やサービスで社会に貢献していきたいと考えています。インターンをしようという学生のモチベーションは高く、どんどんスキルアップしていきますので、社員の刺激にもなりますね」(深浦氏)

 こうした若者たちと企業とのコラボレーションは、まさに「胃」と「心臓」の関係のようだ。時代に敏感に反応できる若者と、企業が持つリソースとがうまく連携することで初めて、日本のネットサービスの“体力”の底上げが期待できるのではないだろうか。

(中島 駆/5時から作家塾(R)