人事コンフィデンシャル_トヨタ写真はトヨタ自動車ホームページより

トヨタ自動車で佐藤恒治「新社長」をトップとする新体制がスタートした。新政権発足に伴って大刷新された幹部人事には、トヨタ流の考え尽くされた深謀遠慮が潜んでいた。有望と目された副社長3人がわずか1年で更迭された真相と、新体制で権力を拡大させそうな幹部候補に迫る。(ダイヤモンド編集部 副編集長浅島亮子、副編集長千本木啓文)

14年ぶりの新政権がスタート
陣営作りに秘めた章男氏の深謀遠慮

 4月1日、トヨタ自動車の新体制が発足した。14年ぶりに就任した佐藤恒治“新社長”の初仕事は、3日に開催された入社式への参加となった。佐藤氏は新入社員1450人に向かって、「クルマ屋の会社へようこそ。これから一緒に車の未来を変えていこう」と熱心に呼びかけた。

 入社式後に集まった報道陣に対して「『クルマ屋に入ったな』という記憶を会社生活の原点にしてほしかった」と説明。カーガイ(Car Guy)を自称する豊田章男会長仕込みのカーガイぶりを見せつけたという。

 一方章男氏自身は、1月末の交代会見で「私はどこまでいってもクルマ屋。クルマ屋を超えられない。それが私の限界」と明言し、後継の佐藤氏にバトンを託していた。クルマ好きというエモーショナルな情熱だけでは、激変するモビリティ業界で巨艦トヨタの操縦など任せられないことは、佐藤氏の任命者である章男氏自身が身にしみて分かっていることなのだろう。

 それでは、章男氏はいかにして佐藤新政権の陣営作りに挑んだのか。

 次ページでは、その考え尽くされたトップ人事の背景にある深謀遠慮を読み解く。今回の新体制が発足するに当たって、上層部人事が大幅に刷新されている。有望な副社長3人がわずか1年で更迭された真相と、新体制で権力を拡大させそうな幹部候補に迫る。