相次ぐシステム障害からの立て直しを託され、みずほフィナンシャルグループの社長に緊急登板した木原正裕氏も、今年で就任2年目。2023年度の役員人事には独自色が出るとみられていたが、大方の予想を裏切り、3月に発表された「木原人事」は“不発”に終わった。木原氏の意図を読み解くとともに、その過程で浮かび上がった出世頭4人の実名、および役員人事の決定の裏でひっそりと整えられた参謀部隊について明かす。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)
「木原人事」は一見無風も
浮かび上がる後継候補の面々
「驚きだ」(みずほフィナンシャルグループ〈FG〉幹部)――。3月、みずほFGの社内は、4月1日付の役員人事を巡ってにわかにざわついていた。
みずほFGでは2021年にシステム障害が相次ぎ、坂井辰史氏(1984〈S59〉年、旧日本興業銀行入行)が社長を辞任する騒動に発展。22年2月に木原正裕氏(89〈H1〉年、旧興銀入行)が、新年度を待たずして社長のバトンを引き継いだ。
そんな木原氏も、今年で就任2年目だ。23年度は、混乱からの脱却を明確に打ち出すためにも、木原氏が役員を大幅刷新する「木原人事」が発動されるはずだとみられていた。
ところが、だ。いざ発表された役員人事は一見すると、「無風に近い」(前出の幹部)ものだった。
特にサプライズだと受け止められたのは、銀行グループの要を担う2人の処遇だ。すなわち、グループCSO(グループ戦略策定・推進責任者)の猪股尚志氏(90〈H2〉年、旧富士銀行入行)と、グループCHRO(人事戦略・人的資源管理責任者)の上ノ山信宏氏(91〈H3〉年、旧興銀入行)の留任である。
どちらもシステム障害を騒動に発展させた一因をつくったといわれ、「グループとしてはっきりけじめをつけようとするなら、退任が順当」(みずほFGOB)とされていた。
木原氏には、果たしてどんな意図があったのか。
次ページでは、みずほFG社内外を驚かせた木原人事を読み解くとともに、その過程で浮かび上がった出世頭4人の実名、および役員人事の決定の裏でひっそりと整えられた参謀部隊について明かす。