ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長(62歳)の後継者問題よりも喫緊のもの。それは、同社の創業期から孫氏を支え、長く女房役を務めてきた宮内謙氏(69歳)が社長兼最高経営責任者(CEO)を務める通信子会社ソフトバンクの後継者をどうするかという問題だ。
かねて「60代で引退」を公言してきた孫氏は、最近になって「69歳までに」と言い換えているが、宮内氏がまさにその年齢。11月1日の誕生日に70歳の大台を迎える。
NTTドコモの吉澤和弘社長は64歳、KDDIの高橋誠社長は57歳(高は正式にはハシゴ高)。宮内氏は、通信大手3社社長の中で最年長だ。そればかりか、2016年に退いたドコモ前社長の加藤薫氏(68歳、現NTTドコモ相談役)と、昨年交代したKDDI前社長の田中孝司氏(62歳、現KDDI会長)よりもさらに年上。携帯電話業界の新参者だったはずのソフトバンクのトップは、いつの間にか業界の長老格になった。
「そろそろ花道を飾りたい」という宮内氏の軽口を複数のソフトバンク関係者が耳にしている。それを聞いた側は「あながち冗談にも聞こえず、実際に引退したいのが本音だと思う」(ソフトバンク幹部)との受け止めが多い。
もともと宮内氏にトップ就任の野心があったわけではない。ソフトバンクが通信事業に参入した当初から副社長兼最高執行責任者(COO)として孫氏を支えた宮内氏は、15年に孫氏から社長兼CEOに指名された際、「社長をやってもいいけど、COOのままでいい。孫さんがCEOをやってよ」と固辞したという。それでも「いや、CEOはおまえだ」という孫氏の強い意向によって今のポジションに就いた。
孫氏が69歳で引退すると公言している以上、宮内氏はそれを意識せざるを得ない。しかし、あるSBG幹部は「孫さんは意外と人見知りのところがあるので、これと決めた人以外に仕事を任せられない。だから宮内さんを当分辞めさせないだろう」との見方を示している。
それでも、「その時」が刻一刻と近づいているのは明白で、宮内氏の後継レースは激しさを増している。その候補は、榛葉淳氏(56歳)、今井康之氏(61歳)、宮川潤一氏(53歳)の3人だ。