文系でも怖くない 学び直し!数学第2回
ビジネスパーソンの必須スキルである数学を、一からおさらいする「学び直し!ビジネス数学」特集(全8回)。第2~6回では、中学&高校で学んだ数学を復習しつつ、それらが社会の中でどのように役立っているのか豊富な事例を紹介する。初回のテーマは指数・対数。現役エンジニアで『数学大百科事典』の著者の蔵本貴文氏と、大人のための数学教室和の川原祐哉講師に、徹底解説してもらった。(「週刊ダイヤモンド」2019年2月9日号を基に再編集)

大きな数をシンプルに扱う

 指数と対数。この言葉を聞くだけで「難しいことが始まった」と嫌になってしまう人も多いだろう。だが実際には、大きな数や小さな数を簡単に扱うためのテクニックだ。まず指数から復習しよう。

 指数は、ある数や文字の右上に小文字で書いた数のこと。そして、この小文字は、繰り返し掛ける回数を表している。

 例えば、25は2を5回掛けるという意味で、32を表している。

 これのどこが便利なのかと感じるかもしれないが、世界には0をたくさん使わないと表現できないものが頻繁に登場する。

 分子の数を計算するときに使うアボガドロ数は、6の後に0が23個も並ぶ巨大な数だ。一方、電子の重さは小数点の後に0が30個並ぶとても小さな数になる。

 指数を使えば、これらをシンプルに表すことができる。もしも指数がなければ、化学や電子工学は0の数をいかに間違えずに書くかという、とんでもなく面倒な状態に陥っていたことだろう。

 指数の本領は、掛け算や割り算をするときに発揮される。

 23と22を掛けると、指数を足した25になる。同様に25を22で割ると、指数を引いた23が答えになる。つまり指数は、「掛け算を足し算」に、「割り算を引き算」にするという、計算をラクにする性質を持っているのだ。

 実際に計算で使ってみよう。2010年に小惑星「イトカワ」からサンプルを持ち帰った探査機「はやぶさ」は、約60億キロメートルの距離を、約7年間かけて旅した。平均速度は秒速何キロメートルだろうか。