日本人がかつておこなった「リスクテイク」

「日本人とリスク」の問題には、日本史にヒントがあります。
誰もが学校で学んだことですが、奈良・平安時代に日本は遣唐使を中国に派遣しました。
当時の船は20メートル程度の大きさで、航海の技術は未熟なものだったそうです。なんと、中国へ渡る船の約半分は沈没してしまいました。50%の確率でしか中国に渡れないのです

それでも、1隻の船には100名ほどの遣唐使が乗りました。彼らは、当時の高官や留学生で、いわば「超エリート」の人たちです。
遣唐使のときは4隻の船を出しました。なぜなら、行きの船で2隻が沈み、帰りの船では1隻が沈む計算になるからです。
300人ものエリートや財産を海の底に沈めてでも、中国の政治体制や文字、文化、宗教を取り入れようとしたのです

かつての日本人はこうした「リスクテイク」をして、貪欲に外の世界から学びました。
日本人は決してリスクをとれない民族ではないのです。

そんなに「損」が怖いのか?

人間は本能的に「損失を回避したい」という気持ちのほうが、「何かを得られる」という気持ちよりも大きくなるそうです。
これは、行動経済学でノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンらの「プロスペクト理論」としても実証されています。
けれど、合理的に考えて期待値がプラスになる場合は、チャレンジしたほうがトクです。
ちなみに、今の世の中では、諸外国と比べて、日本人のほうがチャレンジしない割合が大きいそうです。国民的に「損失を回避したい」という傾向が強くあらわれるのです。

私は投資家として、日本に損したくない気持ちが必要以上に蔓延しすぎていることを残念に思っています。だから、この記事を読んだみなさんには、ぜひチャレンジする戦略を選択していってほしいのです。
損するリスクを直視した上で、貯め込んだお金や、自由な自分の時間を、少しでも未来のために投じるのです。
これからの日本では、「動く人」と「動かない人」の格差が、さらに広がっていきます
ところが、前者の考え方を持つ人たちに対して、「イタい人」だとか「意識高い系」と揶揄する人も多いのが今の日本です。
「動かない人たち」は、嫉妬の感情が大きいため、自分の水準まで他人を引きずり下ろそうとしてくるでしょう。
嫉妬などの負のエネルギーは連鎖していくので、「チャレンジするのが怖い」「恥ずかしい」などと、社会全体の不活性化につながっていくのです。