「繰り上げ返済」+「資産運用」が
現実的な老後対策に

 Nさんからのご相談には「人生どこでどうなるかわかりません。私が80歳まで生きられる保証はありません」と書かれており、老後はもっと充実したお金の使い方をしたいというお気持ちが感じられました。

 そこで、退職金を住宅ローンの返済に充てずとも問題がないかどうか確かめようと、先のような試算を行ったわけです。ただし、ファイナンシャルプランナーという私の立場から申し上げたいのは、ストレートな言い方になりますが、以下のことです。

 Nさんが住宅ローンを抱えたまま亡くなったとしても問題がない、むしろ早く亡くなればなくなるほど、奥さんには多額の資産が残ることになるので経済的な面からはむしろプラスといえるでしょう。

 それよりも想定しておかなければならない大きな問題は、Nさん夫婦が「健康ではない状態で長生き」された場合です。先の試算は、あくまでもNさんご夫婦が「健康で長生き」できることを前提としています。万一、介護が必要な状態になった場合、住宅ローンの返済に加えて、介護施設の費用が上乗せされることになるのです。

 介護施設の費用もさまざまですから一概に言うことはできませんが、施設に入られた場合、月十数万円の費用はかかるでしょう。Nさんの場合、健康でいれば金銭的に問題はないものの、気になるのは完全リタイア後に、想定外の事態が起きて加速度的に金融資産が減少していくことです。つまり、Nさんは、ご自身が長生きして想定外の出費が起きても対処できるよう備えることが重要なのです。

 そのためには、全額ではないものの退職金などの一部で繰り上げ返済を行いながら、投資資金を運用していくのが現実的な対策として考えられます。例えば、60歳時点で退職金の半分、1000万円を繰り上げ返済すると、69歳でローンは完済となり、利息の軽減効果は約150万円になります。もしそれが可能になれば、大まかに65歳時点の金融資産は3160万円、69歳の住宅ローン完済時には約2200万円の金融資産(2回分のリフォーム資金差し引き後)を保有している状態になります。

 70歳以降は、先の試算のように赤字額は年間52万8000円となり、80歳時点の金融資産額は1672万円です。繰り上げ返済しない場合よりも500万円以上も資金に余裕のある状態になり、その分が想定外の事態に対応する費用になるわけです。

 大まかな試算ですが、現実的にとるべき行動は「繰り上げ返済」と「資産運用」の併用といえるでしょう。簡単ではありますが、今回の試算を参考にされて、リタイア後のライフプラン並びに、これからの家計収支や資産形成プランをしっかり考えていただきたいと思います。

(ファイナンシャルプランナー 深野康彦)