日本の携帯電話業界は、“閉じた世界”で完結していたビジネスモデルが通用しなくなってきたにもかかわらず、またぞろ「いつか来た道」に逆戻りしつつある。今では、10兆円産業にまで育った業界は、そろそろ“問題の本質”と向き合うべきだ。
通信業界は“ムラ社会”である。そのムラの内側では、「第4の官製不況」という話題で持ちきりである。
ある大手通信キャリアの幹部は、匿名を条件に、こう明かす。
「現在の携帯電話業界を取り巻く不況の根本的な原因は、総務省がつくり出している。2006年に改正された建築基準法、金融商品取引法、貸金業法に続く、“第4の官製不況”という認識だ」
ムラが困っているのは、07年初頭に総務省が“消費者にわかりにくい携帯電話の不透明な販売慣行の是正”を打ち出したこと。これが原因となり、08年に入ってから端末が売れなくなったということを指している。
07年の秋以降は、端末の販売方式が、「販売奨励金モデル」(できるだけ安く端末を販売して後から通信料金で回収する方法)から、「分離モデル」(端末価格と通信料金を明確に区分して割賦で販売する方法)へ切り替わった。
「分離モデル」登場の理由は
販売奨励金への不満噴出
なぜ、携帯電話の販売方式が変更になったのかと言えば、従来型の「販売奨励金モデル」では、不公平感が根強かったからだ。