日本郵政グループの金融商品の販売では、かんぽ生命でも、販売にあたった郵便局員が、顧客に対し新旧契約の保険料を故意に6ヵ月以上二重払いさせるなど、かなり悪質な不正が多数発覚している。

 かんぽ生命の顧客数は約2600万人だが、不正契約件数は約9万3000件にのぼるという。被害に遭った顧客のほとんどは高齢者層である点も悪質だ。

「常套手段」とされていたのが保険の乗り換え時の不正で、保険の二重契約(2万2000件)、無保険期間を作る(4万7000件)といったものだ。

 これは、郵政局の信頼ブランドを著しく低下させるもので、信頼回復は至難の業だろう。

 どうしてこういうことが起きたのか。

遠因は「民営化見直し」
“半官半民”で業務縛られる

 2007年に、持ち株会社の日本郵政のもとに、日本郵便(郵便局、郵政事業)とゆうちょ銀行、かんぽ生命がぶら下がる形で民営化した郵政が、民主党政権時代に「再国営化」されたことはあまり知られていない。

「郵政民営化」という言葉がマスコミなどで、今でもよく使われているので、そう思い込んでいる人が多いが、民主党政権になった2009年に「民営化見直し」が閣議決定された。

 その後、2012年に見直し法が成立して、ゆうちょとかんぽの金融2社の政府保有株の全額売却は、義務から努力義務に変わった。事実上、完全売却が凍結され、今もゆうちょ銀行やかんぽ生命の株式の大半は、政府が約6割の株を持つ日本郵政が持っているのだ。

 筆者は、小泉政権時代の郵政民営化の制度設計に関わったが、小泉政権では、ゆうちょ銀行やかんぽ生保については、政府は一切、株を持たず、経営は民間に任せる「完全民営化」を実現する狙いだった。

 実際、2005年に関連6法が成立、07年からその枠組みで民営化はスタートしたのだ。

 なぜ、ゆうちょ銀行とかんぽ生命について、政府は株を一切保有しないことにしたかといえば、これら2社は金融事業を営んでいるからだ。

 金融事業は、リスクを扱うことが本質なので、基本的には、国民のためにリスクを極力回避する官の事業とは相いれない。

 もし、官が金融事業を行うことが必要なら、政府が100%株式を保有する政府系金融機関で限定的に行うというのはあり得る。だがそうでなければ、政府が一切株式を持たないスタイルが世界の標準だ。なお、金融機関救済のための一時国有化は、この例外である。

 それなのに、民主党政権では、金融事業の2社の株式を政府が持とうとした。今のゆうちょ銀行とかんぽ生命は、いわば「半官半民」で中途半端である。

 民間金融機関になりきれず、まともな事業展開ができずに、もがき苦しんでいる。今回の問題は2社のこうした状況の下で起きたといっていい。