Tong氏は「ペスカタリアンやベジタリアンで心疾患リスクが低下したのは、食事による減量や血圧、コレステロール値の改善、糖尿病有病率の低下などが部分的に関与したのでは」との見方を示している。ただし、この研究は因果関係を証明するものではないとして、同氏は慎重な解釈を求めている。
また、心疾患リスクの低下度や脳卒中リスクの上昇度はわずかであり、「肉を食べる人と比べて、ベジタリアンでは10年間に心疾患を発症する人が1000人当たり10人少なく、脳卒中を発症する人が1000人当たり3人多いだけだ」と同氏は説明している。
Tong氏によると、最近の研究から、コレステロール値を過度に下げると出血性脳卒中のリスクが高まることが報告されている。また、ベジタリアンやヴィーガンの人は、動物性食品のみから摂取できるビタミンB12などの一部の栄養素が不足しがちになることも指摘されている。さらに、ビタミンB12欠乏は、脳卒中リスクの上昇と関連する可能性も示唆されているが、結論には至っていないという。
論文の付随論評を執筆したディーキン大学(オーストラリア)公衆栄養学教授のMark Lawrence氏は、「食事ガイドラインでは、食事が健康全体に与える影響について考察されており、肉や魚を食べる人たちと同様に、ベジタリアンにとっても適切なアドバイスが示されている」と説明。また、「植物性食品を中心とした食事に変えることは、個人の健康だけでなく地球環境にも優しいといえる。ただし、そのためにベジタリアンになる必要はない」と話している。
一方、専門家の一人で米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン医療センターの管理栄養士であるSamantha Heller氏は、「野菜中心の生活を送る人たちは、ビタミンB12やビタミンD、ω3脂肪酸などが不足しないよう食事やサプリメントから補う必要がある」と指摘する。ただ、植物性食品が主体の食事は、心血管疾患や一部のがん、2型糖尿病などの予防に有用だとし、「牛肉や豚肉などの赤肉や加工肉の摂取を控え、豆類や豆腐、ブロッコリー、ホウレンソウ、カリフラワーなどを食べるとよい」と助言している。(HealthDay News 2019年9月5日)
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