先月、国立がん研究センターから39都道府県別のがん罹患率状況が公表された。

 その結果、胃がんは日本海側で、大腸がんは北海道、東北、山陰地方で多い傾向が、肝がんはC型肝炎ウイルス感染率が高い西日本で多いことが判明した。地域差が生じた理由として、北国の塩分が多い食生活やピロリ菌感染が胃がん発症に影響しているとする一方、大腸がんには肥満の影響が考えられるとしている。

 ウイルス感染が誘発する一部を除き、がんの発症予防に特別な一手はない。やはり、食生活の改善など地道な努力がものをいう。

 先日、米国から菜食で大腸がんリスクが20%低下するとの報告があった。

 調査は北米在住の男女、約7万7000人を対象に行われた。対象者の半数は普通の非菜食主義者。残りは菜食主義者だが、完全菜食主義者(ビーガン)、乳製品や卵は食べる乳卵菜食主義者(ラクト・オボベジタリアン)、肉はダメだが、乳製品と卵を少なめに魚を主に食べる魚菜食主義者(ペスクタリアン)、肉は食べるものの、週に1回未満の半菜食主義者(セミ・ベジタリアン)の4タイプが参加している。

 7年間の追跡調査の結果、非菜食主義者に比べ、菜食主義者全体では、大腸がん発症リスクが約22%低下した。また、菜食主義のタイプ別では、ビーガンの発症リスクは16%低下にとどまったが、魚と野菜が主のペスクタリアンは43%と、大幅に発症リスクが低下することが示されたのだ。

 ラクト・オボベジタリアンは18%、セミ・ベジタリアンは6%の低下だった。

 大腸がんに関しては、以前から食物繊維の予防効果がいわれている。しかし、今回の調査からは、「やり過ぎ」がせっかくの効果を半減させる可能性が示唆された。何事もほどほどが良いようだ。

 魚介や野菜を主菜に、乳製品と卵は少なめで肉は食べないペスクタリアンの食生活は、和食に慣れた日本人にとって、さほどつらいものではない。ついでに塩分少なめなら、胃がんと高血圧の予防効果も期待できます。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)