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国勢調査で発掘! 東京23区お役立ちデータ

東京23区「今どき3世代同居」事情

出生率が高い街ほど3世帯同居率も高い?

池田利道 [一般社団法人東京23区研究所 所長],小口達也 [一般社団法人東京23区研究所 上席研究員],一般社団法人東京23区研究所
【第7回】 2012年7月17日
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「街が子育てを助けてくれた」

 何でも利害で説明しようとする現代社会では、3世代同居を祖父母に子どもを預けることができるメリットで評価しようとする。だが、子育て真っ最中の30代主婦(有配偶女性)の就業比率は、1位が中央区、2位が品川区、3位が豊島区。低い方は、江戸川、練馬、世田谷の順。3世代同居との間に何ら相関関係が存在しない。

 では、出生率はどうか。合計特殊出生率が東京23区で一番高いのは江戸川区。23区平均を3割近く上回る。2位以下も、合計特殊出生率と3世代同居比率の順位はよく重なり合う。例外は、3世代同居の割合が最下位ランクながら、出生率はベスト10に顔を出す港区と中央区。若い世代を中心に人口増加が著しい都心区は、近年出生率が急上昇中という例外的な存在だ(下のグラフ参照)

 ちなみに、港区と中央区を除く21区の合計特殊出生率と3世代同居比率の順位相関係数は0.75。かなり深い相関関係がある。 

【図2】合計特殊出生率
  資料:総務省統計局「国勢調査」より作成
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 親と同居しているから安心して子どもが産める。そう考えると、これは当たり前の結果のように思えるが、データ解析上はそれだけでは済まされない。3世代で暮らす6歳未満の幼児は、23区の平均で幼児全体の5%。江戸川区でも7%しかいない。たった7%では、江戸川区の出生率の高さを説明できないからだ。

 答えをいうと、3世代同居と出生率の間に、街の姿が介在している。3世代同居の割合が高いような、人と人との関係を大切にする街だから、出生率も高くなる。つけ加えるなら、港区や中央区に代表される、経済的にも、社会的にも、時間的にも、あらゆる面でゆとりを楽しむ生活が、出生率を高めるもう一つのスタイルとして生まれ始めている。これはこれで、文句なしのトレンディライフだ。

 「子育て支援は自助か公助か」の議論がかまびすしい。大いに議論するのは結構なことだが、子育て支援問題には、出生率という明快な通信簿が存在する。例えば、合計特殊出生率がダントツに高い沖縄県(2011年値で全国平均の1.39に対し、沖縄県は1.86)。なぜ沖縄は出生率が高いのかをもっと真剣に考え、学ぶべきだろう。

 そんな沖縄に移住した歳若き友人に、「沖縄に移住して何がよかったか」と聞いてみた。すかさず帰って来た答えは、「近所の人たちが子育てを助けてくれたこと」。ふと、筆者が子育て期間を過ごした足立区での生活を思い出した。

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池田利道
[一般社団法人東京23区研究所 所長]

一般社団法人東京23区研究所所長。東京大学都市工学科大学院修士修了。(財)東京都政調査会で東京の都市計画に携わった後、㈱マイカル総合研究所主席研究員として商業主導型まちづくりの企画・事業化に従事。その後、まちづくりコンサルタント会社の主宰を経て現職。

小口達也
[一般社団法人東京23区研究所 上席研究員]

一般社団法人東京23区研究所上席研究員。1978年より財団法人・東京都政調査会研究員、都市問題・自治体政策の研究に従事。87年より中央大学社会科学研究所・客員研究員、多摩地区の地域開発研究に従事。その後、フリーを経て現職。

一般社団法人東京23区研究所

東京23区をさまざまな角度から調査・分析している。マーケティングレポートなどを発行。HPはこちら

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国勢調査の結果は、大規模なデジタルデータベースとしてネット上で公開されているマーケット開拓情報の「宝の山」だ。反面、その内容があまりにも精緻であるがゆえに読み解き方は難しい。当連載では東京23区を例に取り、膨大な国勢調査データを実務に生かすヒントを紹介する。

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