グラフィックも機能性が大事

平野 デザインというとジャンルもいろいろあるし、今はデザインという言葉が使われすぎてわかりにくくなっているところもあると思います。水野さんが、デザインの中でもプロダクトよりグラフィックに関心を持たれたのはなぜですか?

水野 実はもともと僕はプロダクト志望だったんです。でも入学試験に受からなかったので、運命の導かれるままにグラフィックから入っていきました。

平野 プロダクトとグラフィックは、求められる資質が違うんじゃないですか?

水野 プロダクトの場合は、持ちやすいかとか、見えやすいかといった機能的な条件を必ず満たさないといけませんよね。
グラフィックだと、機能面が足りなくても成立してしまうところもあるので、そこをものすごく丁寧に考えているデザイナーはとても少ない。でも本当は、グラフィックも機能を優先しないといけないと思うんです。
グラフィックでいう機能とは、「見てもらえるか」ということ。見てもらえないと存在しないのと同じだから、本来はグラフィックのほうが機能にシビアであるべきなのに、シビアになりきれていないケースが多いんです。

平野 横尾忠則さんのポスターは、デザインした当時も道端や駅でちゃんと見られていたし、今でもみんなが「何だこれは?」とついつい見てしまいます。それは「見てもらう」という機能をしっかり満たしたデザインだったということなんでしょうね。
プロダクトは、実際に触った時のフィジカルなコンタクトの中での話になるので、デザインよりも人との関係性の中で機能性をイメージしやすい。でもデザインにおける機能は、どちらかというと社会的な議論というか、それによって多くの人がその情報を知りたいか、欲しいと思うかという話になりそうですね。

※次回は「本能で感じるカッコよさ」。二人の熱いトークが続きます。