高齢化の進展に伴い、銀行界は若い世代を獲得するための戦略に心を砕いている。多くの銀行がネットバンクに乗り出す中、都内に本店を構えるあおぞら銀行は、業界内で最高水準の預金金利を誇るスマートフォンサービスを繰り出した。さらに個人向け取引における事務処理を全てネットに移行するなど、業界初の取り組みに着手した。あおぞら銀行のデジタル戦略について、馬場信輔社長に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 田上貴大)
――7月7日に、「BANK」という新しいスマートフォン向け銀行サービスを発表しました。この狙いを教えてください。
BANKは新たなインターネット上の支店です。構想自体は2~3年前に始まっており、ネットを使った新しいサービスを個人の顧客にどう提供するか、社内で議論してきました。
そもそもの問題意識は、私たちの個人の顧客は比較的シニア層が多く、特に50代以降の顧客が全体の8割を占めています。もう少し若い世代の顧客にどうやってサービスを広げていくのかが、私たちのリテール(個人向け)業務の課題でした。
若い世代の開拓となると、当然ながら、有人店舗以上にネットを使ったサービスを拡充することが不可避の課題です。ネット支店自体は、どこの銀行もやっていて、目新しいものではない。このタイミングで新しくサービスを打ち出す上で、どのように差別化していくかをずっと練ってきました。
――地方銀行がネット銀行をつくったり、LINEも銀行業の準備をしていたりと、銀行のスマホ向けサービスにおける競争が激しくなりつつあります。BANKはどのように競争に勝とうとしていますか。
私たちは、分かりやすいサービスが良いだろうと思い、シンプル、スピーディー、スマートという言葉を掲げています。その最たる例が、まず普通預金の機能を充実させようと、普通預金の金利を思い切って業界で一番高い水準の0.2%にしたことです。これはキャンペーン金利ではなく、恒常的にこの金利でいきたいと思っています。あれこれ考えずに、取りあえずここに預金を置いておけばいいや、と顧客に思ってもらうのが出発点です。
他にも、デビットカードのサービスを用意しましたが、キャッシュバックの割合もかなり高めの最大1%に設定しました。それから、これは特許申請中ですが、カードを使うたびに一定割合を積立預金というかたちでためられる機能を付けました。1万円の物をカードで買ったら5%、つまり500円を貯金する。そうしてカードを使うごとに少しずつ、知らず知らずに楽しくお金をためてもらう機能となります。
現時点をサービスとしての「Day1」とすると、「Day2」に向けた機能やサービスの充実が課題になります。そこで、投資信託といった金融商品を販売することを考えています。あるいは、グループ会社のあおぞら証券とリンケージを強めて、証券会社から社債や株式関連の商品を案内するということもしていきたいです。