低金利環境によって多くの銀行が不振にあえぐ中、高齢化社会の到来に伴い、信託銀行に対する顧客のニーズが高まりつつある。この追い風をみずほ信託銀行はどのように生かし、役割を果たしていくのか。飯盛徹夫社長に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 田上貴大)
――日本では高齢化が進み、信託銀行に対する顧客のニーズが高まっています。みずほ信託銀行は、今の金融界でどのような役割を果たしていきたいと考えていますか。
私は今年、みずほ信託の社長になって3年目を迎えました。就任当初から、信託銀行は日本の課題を解決する力があると申し上げてきて、それを実践してきました。
個人向けの業務から具体例を話すと、日本の大きな課題は少子高齢化であり、この問題がさまざまなネガティブインパクトを与えています。資産をどう守り、残していくかという高齢者のニーズに応えるため、私たちは一昨年に(介護や家事代行など異業種のサービスと信託商品をセットにした)「選べる安心信託」という商品を発売しました。
これは高齢者向けのヒット商品になり、すでに信託財産の残高は500億円、申込者は1300人を超えています。普通の信託商品ならば4~5年かかるものを、約1年半で成し遂げました。
また、高齢化の進展に伴い、認知症への備えが急務となります。認知症になって意思能力が認められなくなると、資産を使えません。そのための取り組みの一つとして、みずほ信託を含めた信託業界は(認知症などで判断能力が衰えた人の支援者を選任する)成年後見制度をサポートするために「後見制度支援信託」という商品を提供しています。
ですが、従来の商品はどうも使い勝手が悪い。後見制度支援信託においても、契約後は支払いの許可に手間がかかり、例えば80代の認知症の親と60代の介護する子供が同一の家計で生活しているケースで、家計が回らなくなることがあります。
もう少し柔軟な認知症関連の信託商品が必要だという意見を踏まえて、今回新しく「認知症サポート信託」を作りました。この商品では、勝手に資産を利用できなくなる「解約制限機能」が認知症と診断されるまで発動されなかったり、認知症と診断された後に資産を管理する代理人を2人まで指定できるようにしたりしています。