百名山ブームで登山者数がピークを迎えた1990年代、ヘリ会社は山小屋向けの荷上げ事業に次々と参入し価格競争を繰り広げた。だがその後、飛行条件が悪い山岳地帯での荷上げ事業はリスクが高く、公共工事などに比べて高い単価も望めないため利幅が薄いと判断し、各社は相次ぎ事業縮小と撤退に踏み切る。最後に残ったのが東邦航空だった。

 業界に共通のパイロットと整備士の人手不足も重なり、荷上げ事業への今後の新規参入は望むべくもない状況になっている。

 幸いにも故障したヘリの修理が何とか早期に完了し、8月までに山小屋の孤立状態はほぼ解消された。「故障と悪天候という悪条件が重なったことでこうした事態が起きた。今後、将来的なヘリの新規購入も含み再発防止策を考える」と東邦航空の担当者は話す。だが「今夏は乗り切ったものの、今後どうなるかは極めて不透明。行政や各地の山小屋経営者全体で、何らかの対策を講ずる必要があるのではないか」と雲ノ平山荘の伊藤二朗さんは訴える。

 登山者が安全に登山を楽しむための環境は、誰がどう守るのか。

 北アルプスをはじめとする日本の一級の山岳は、その多くが国立公園内にある。国立公園とは「環境大臣が指定し国が直接管理する公園」で、国が「優れた自然の風景地を保護するために開発を制限し、自然に親しみ、利用がしやすいように必要な情報の提供と利用施設の整備を行う」と環境省により定義されている。