台風による大雨直後ではなくても
地下水位は“安全基準”を下回らない
さて、豊洲移転時に最も注目を集めた問題が土壌汚染だ。9月25日に都が公表した地下水と空気の計測結果によると、市場内の空気は安全で、地下水の汚染は依然として続いているが、従来と大きな変化はない。
とはいえ、地下水の水位は未だにコントロールできていない。小池知事の肝いりで就任後に再招集された「土壌汚染等に関する専門家会議」は移転前、地上への有害物質の漏出を防ぐため、A.P.(東京湾中等水位)+1.8メートルを地下水位の目標管理水位とするよう報告書をまとめていた。
都はその後、本来は一時的な地下工事のために地下水をくみ上げる「ウエルポイント」と呼ばれる強力なポンプを、地下水位観測用の複数の井戸の近くに設けて地下水をくみ上げて来た。
だが、9月11日現在の地下水位は32カ所中17カ所で1.8メートルを上回っており、そのうち2カ所は3メートル台、11カ所が2メートル台だ。専門家会議とは別に設置された都の「市場問題プロジェクトチーム」もまた、地震時の液状化被害を防ぐ観点からA.P.+1.8メートルの管理が必要だと指摘していたが、目標は未達だ。
豊洲市場の山本論環境改善担当課長は、「直前の台風による雨で上昇したが、雨が少ない時の水位はもっと低い」と釈明する。だが、雨の少ない時期でも水位が2メートルを超えている観測点は複数存在している。加えて、そもそも専門家会議の報告書などには、大雨の後は水位が高くても良いとは書かれていない。稼働しているウエルポイントは現在、移転直前の21カ所よりも少ない14カ所となったが、1年たっても解決からは程遠いのが現状だ。