仲卸業者の店舗スペースの幅の狭さも従来から指摘されてきた。築地時代よりも細長くなり、使い勝手が悪化したのだ。結果、歩道やターレが走る通路でも、人間の身長より高いところまで発泡スチロールの箱が積み上げられている。前出の大谷副場長は「業界団体とともに改善に向けて指導していく」と語るが、都は昨年の移転直後から同じことを繰り返している。
また築地時代は、仲卸業者の店舗エリアに大きな排水溝があった。そのため魚の内臓や骨、血液などが床に落ちても、大量の水で洗い流せば、後はバキュームカーが処理してくれ、清潔な環境を維持できた。
ところが豊洲の排水溝は小さく、底が浅い。移転に反対してきた「築地おかみさん会」会長で仲卸業を営む山口タイさんは「1日に何回も排水溝の底の掃除を強いられ、手間が増えた」とぼやく。
こうした問題の抜本的な対策は採られていない。都は排水溝の金網を止めるボルトを外して清掃作業をしやすくしたとしているが、設計段階で、仲卸業者の仕事を把握していなかったがゆえの不便と言えるだろう。
なお築地時代から、場内の飲食店や関連物販の商店も観光客の間で人気を博していたが、彼らもまた客の減少と移転によるコスト増に苦しんでいる。
水産仲卸棟3階のカレー店「印度カレー 中栄」店主の円地政広さんは「8月の電気代が14万5000円になった。築地時代は冷房を回していても高くて3万円程度だったのに」と怒りをあらわにする。
円地さんが都から受けた説明によると、豊洲市場の空調は集中管理型で、電気代負担は月3万円程度とされていたが、そもそもそうした説明を受けたのが移転の1カ月前だった。そして8月以外の月でも、月6~7万円程度かかっているという。築地時代より店舗面積は1.5倍に増えたが、席数は減った。そのうえ豊洲の空調は、効きが悪いのだという。
飲食店エリアでは海産物を扱う店舗には行列ができているが、それ以外や物販店は客数減に苦しんでいるケースが多い。