「リストラ研究所」のイメージも好転?

 ウェバー氏の就任と前後して国内唯一の研究機関だった湘南研究所(現湘南ヘルスイノベーションパーク)で2度のリストラがあり、研究員約400人が退職したことがダイヤモンド編集部の独自取材で判明している。

 2度目のリストラが労働組合と協議された15~16年にメガファーマの仏サノフィ出身、アンドリューS・プランプR&D(研究開発)ヘッドが危機感をあらわにした言葉が、研究員の語り草となっている。「わが社のR&Dの生産性は平均以下だ。競争激化の下、このままでは事業継続できない」。

 研究員のプライドをずたずたにしたリストラの混乱の中でも研究は進み、TAK‐925は生まれた。国内研究員の意地と言っていいだろう。

 武田薬品は9月、「早ければ23年」とTAK‐925の上市時期を初めて表明し、鼻息は荒い。仮にブロックバスターに育てば実に約20年ぶりの自社創薬での“ホームラン”となる。業界内での注目度はじわじわと上がっている。

 ただし機関投資家や業界アナリストは製品大型化に対し、半信半疑のようだ。クレディ・スイス証券の酒井文義アナリストは「適応症拡大でどれだけ市場が広がるか次第だが、中枢神経は開発が難しい領域。どこまで結果を出せるか」と注視している。

 ウェバー改革で武田薬品のメインの研究機関は米国に移り、「国内研究所は既に魂を抜かれている」との厳しい声が一部にある。期待の新薬が順調に育てば、そんな国内研究所の汚名返上となる。