井阪氏がHD社長就任後の16年10月に中期経営計画「100日プラン」を公表して以降、182あったヨーカ堂の店舗数は158に減った。ところが、販管費、とりわけ人件費の削減はほとんど進んでいない。

 ヨーカ堂創業者の伊藤雅俊HD名誉会長は、最近も業界団体の会合に車椅子に乗って顔を出すなど健在であり、次男の伊藤順朗氏もHDナンバー3の取締役常務執行役員経営推進本部長の座にあるなど存在感を示す。こうした創業家の威光に加え、ヨーカ堂の労働組合が従来、リストラに強硬に反対してきた経緯があるのだ。

 井阪社長は1700人の削減について、「雇用の“移転”を考えている。食品専門店などの成長戦略に加わってもらう」と一定の配慮を見せつつ、「転身支援制度を活用していただく」とも述べ、退職を促す可能性を示唆した。

 長年の課題にようやくメスを入れる姿勢を鮮明にしたわけだが、1700人の削減効果について、説明資料に具体的な金額の記載はなかった。井阪社長は「労使協議はこれからなので」と言及を避けている。方針通りにリストラが進む保証はなく、その効果も見通せない。

 ヨーカ堂とは対照的に、不採算である百貨店のそごう・西武については社員1300人を削減し、86億円のコストを圧縮すると明快に数字を挙げて説明した。

 さらに西武百貨店の岡崎(愛知県岡崎市)、大津(大津市)、そごうの西神(神戸市)、徳島(徳島市)、川口(埼玉県川口市)の5店を閉店。西武の秋田(秋田市)、福井(福井市)の2店の店舗面積を縮小することも併せて発表した。

 百貨店はヨーカ堂と異なり、これまで希望退職や、地方や郊外の店舗の閉店、譲渡により、人件費や地代家賃を含む販管費を減らしてきた。

 問題は、それでも業績が改善しないことだ。

 19年2月期は通期で32億円の営業利益を確保したものの、20年2月期第1四半期(19年3~5月)は3億7000万円、第2四半期累計(同3~8月)では10億7800万円の営業赤字に陥っているのだ。