Structured Communication
「3C」でわかりやすい英語を話す

 上司と会話をしていたとき、私はグローバルプロジェクトをうまくマネージできない言い訳に、自分の英語力不足を挙げたことがありました。

 その際、当時のインド人上司がこんなことを指摘してくれました。

「君は十分英語を話せている。しかし仕事がうまくまわせないのは、しっかりと伝えたいことを伝えきれていないから。そして話がうまく伝わらないのは、自分の意見が固まっていないからだ」

 英語力よりも、自分の意見や伝え方、そして考え自体が定まっていないことを注意されたのです。なかでも、特に私の英語観に影響を与えた言葉があります。

「非ネイティブの我々が、きれいな英語を話す必要はない。自分が伝えたいことを伝えるのに大切なことは、Clear(明確さ)、Crisp(簡潔さ)、Concrete(具体的である)。この3Cを意識して伝える。つまり非ネイティブの英語には 『Structured Communication』(論理的で構造的にわかりやすく伝えるコミュニケーション能力)が必要なのだ」

 彼はアジア全域の業務責任者として活躍するリーダーで、最も影響を受けた上司の一人でした。そんな彼が、昔は「『何を話しているかよくわからない』と何度も指摘された」と語ったのには驚きました。英語力不足を「Structured Communication」を意識して練習することで克服し、グローバルリーダーとして活躍するまでに至ったのです。彼の非ネイティブとしての努力には大いに勇気づけられました。

 余談ですが、インド人は英語がペラペラだというイメージがあったのに、私のまわりにいるインド人たちは皆、日本人と同じように英語を話すための努力を重ねているのです。私の上司は大学卒業まで英語を話したことがなく、卒業後にインドにある米大手飲料メーカーで働いたときに初めて英語で仕事をしたそうです。

 上司の話を聞いてから、私は英語力不足を言い訳にすることはやめて、「Structured Communication」を意識しました。英語でのプレゼンやミーティングの前には話すべき内容を整理し、質問も用意し、自分の考えを簡潔で論理的に伝える練習をするようになりました。

 私たち日本人が英語ネイティブのようなきれいな英語を話すことは難しいです。しかし、非ネイティブでも武器となる英語の伝え方が存在します。「Structured Communication」と併せて活用できれば、英語での伝える力は大きく飛躍します。