登記簿によれば、持ち株管理会社が設立されたのは9月10日。フォートレスが8月19日にTOBを開始して1カ月も経っていない時期である。
フォートレスは元々、ユニゾが旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)の敵対的TOBに対抗すべく、ホワイトナイト(白馬の騎士)として選んだはずのファンドだ。つまりユニゾは表向きフォートレスのTOBに賛同しつつ、その裏で後に賛同を撤回する“口実”として、持ち株管理会社の設立準備を着々と進めていたことになる。
またユニゾ持ち株管理会社には、3人の取締役が名を連ねる。関係者によれば、この3人はユニゾの財務部長、企画部次長、そして秘書という。
確かにユニゾの役員ではないが、その肩書きからして経営陣に近い立場の者たちであることは容易に推察できる。「従業員のみを株主とする、従業員によって設立された法人」というユニゾ側の説明を鵜呑みにすることはできない。
急場で設立された持ち株管理会社の役割は、TOB実施後に公開買付者の持ち分を取得し、保有することにある。これにより買収後も従業員の雇用維持や会社解体を防ぐ「仕組み」が担保される、というのがユニゾ側の主張だ。
そのために持ち株管理会社は極めて強い権限を持つ。例えば、ユニゾが完全子会社化した後も、取締役の選任や組織再編など経営に関わる重要事項については持ち株管理会社の事前同意を必要とする。
さらに持ち株管理会社は、買収者の投資リターンをコントロールし、エグジット(投資回収)の時期や方法を選択できる権利を持つ。つまり買収する側には自らの投資を回収する権限がなく、それらをコントロールできるのは専ら持ち株管理会社というわけだ。