「後出し」の目的は
経営陣の保身か

「あらゆる買収を一切認めないと言っているに等しい。こんな条件は聞いたことがない」。ある市場関係者は、そう呆れ果てる。

 ユニゾは前述のように持ち株管理会社の存在について、TOB開始の時点で一切触れていない。その後に慌てて設立し、しかも買収側が到底飲めない強い権限を持たせたのだ。

 そこから浮かぶのは、持ち株管理会社は「後出し」の産物であり、その目的は会社を是が非でも明け渡したくないという「経営陣の保身」だろう。「他に例を見ない異常な『仕組み』」――。ユニゾ筆頭株主のエリオット・マネジメントはそう批判する。

 一方でユニゾが主張するように、確かに買収後も従業員の雇用が確保されることは企業価値向上に欠かせない。だが同時に、株主価値の最大化も経営陣が果たすべき重要な使命である。

 そもそもユニゾが買収の標的となった原因は、2013年以降に毎年のように公募増資を繰り返し株式の希薄化を招いたことにある。株価が安値で放置される状況を作り出したのはユニゾの経営陣だ。そこにHISを始め数々のファンドが目を付けたのは、必然の結果といえる。

 ユニゾは目下、フォートレスに加え、1株当たり5000円の買収提案をしている米投資ファンドのブラックストーンなどと協議を継続中だ。だが、彼らが明らかに不利な条件を認めるとは思えない。

 協議が物別れに終われば、敵対的TOBに発展する可能性が高い。ホワイトナイトを再び呼ぶにしても、異常な持ち株管理会社の存在は、どんな投資家にとっても障壁になるはずだ。

 ユニゾは買収防止の切り札として持ち株管理会社を持ち出したのだろうが、むしろ自らの戦略的な選択肢の幅を狭めることになりかねない。

 何よりも株主を軽視する場当たり的な判断は、市場の信頼を失うことになるだろう。