OODAループはアメリカ軍で世界の兵法や戦略理論を研究した成果をもとに開発され、シリコンバレーの起業家を中心に、アメリカのビジネスエリートに活用されるようになった思考法です。変化の激しい時代に速く的確に行動するために必要な知的技術と言えます。OODAループ第一人者の戦略コンサルタントが、日本人のためにわかりやすく、実践しやすいマニュアルとして解説したのが、『OODAループ思考[入門] 日本人のための世界最速思考マニュアル』です。本書のウェブ版である本連載ではポイントだけを、よりコンパクトに紹介します。

「ありえない」で、誰でも正しい判断力を失う理由Photo: Adobe Stock

銀座4丁目にライオンはいない?

OODAループの2つ目のOはOrientです。辞書を引くと「方向づける、正しく判断する」といった訳が載っていますが、アメリカではOODAのOrientはunderstand(理解する)という言葉で説明されています。見たもの、気づいたことを、自分なりに理解して納得すること、それが「わかる」です。

私たちは何かを見たとき、自分が持っている世界観に照らし合わせて理解することで納得します。世界観と整合的であるから理解できる、すなわち「わかった」ことになるのです。

例を挙げて説明しましょう。

昼下がりに銀座4丁目の交差点で散歩中の猫とすれ違ったら、あなたはどんな反応をするでしょうか。「都心でたくましく生きているな」と微笑ましく思うかもしれません。しかし、それがライオンだったらどうでしょう。

まず、いるはずのない野生動物が都心を闊歩している姿にわが目を疑い、次に着ぐるみで変装した人間ではないかと考え、アスファルトを打つ鋭い爪音と風に乗って届く獣臭を感じて、ようやく本物だと気づいて腰を抜かす。

たいていの人は、そんなふうになるはずで、こうなると素早い判断や行動はとても期待できません。