92歳で大手術から復活した女性
かつてこんな生徒さんがいました。その方は大腿骨を骨折して、入院して大手術を受けました。年齢は92歳。その年齢からして、ああ、本当にお気の毒だけれど、もう助からないかもしれない、と誰もが思いました。だって90歳過ぎているのですから。
ところが、手術から数ヵ月。その方はなんと、自分の足で歩いて退院してこられたのです。本当に驚きました。久しぶりにお会いして話をうかがったら、「地獄でしたよ」と。
「死んでしまうならまだいいんです。でも、動けなくなったら周りに迷惑をかける。だから、寝たきりにだけはなるもんかと、死に物狂いでがんばったんです」
そうやって、手術をしてすぐから、自分で動かしたとおっしゃるのです。どんなに痛くてつらかったことでしょう。聞いていて涙が出ました。この方のように、人はいくつになっても、生きている限り、自分の努力で自分の体を復活させていくことができます。筋肉も骨も、生きて動かしている限り、新しく育っていくのですよ。
でもそれも、脳がはっきりしていてこそ。脳がきちんと、体の端々まで指令を出し続けることができれば、ずっと、体は働いてくれるのです。だから、脳と筋肉をつなげる訓練が必要なのです。これが、最後まで人に迷惑をかけずに生きるいちばんの方法なのです。
ですから、今日も体が生きて働いてくれていることに感謝してください。感謝の気持ちがなければ、体はよくなっていきません。「こんな太い足、イヤ!」なんて思っていたら、足だって動いてくれませんよ。細胞には、1個1個に意識があるのですから。
本当に素晴らしい体を、ひとりひとりが持って生まれてきたのです。
その体に、最後のその日まで、感謝をし、きちんと使い切って終わりたい。みなさんにもそうあってほしい。そういう思いで、今日も教室で声を張り上げてがんばっています。
1934年生まれ。日本女子体育短期大学卒業。体育教師を経て「きくち体操」を創始。川崎本部のほか、東京、神奈川などの教室、カルチャースクールなどで指導を行う。心と体、脳とのつながりに着目した“いのちの体操”は、性別・年齢を問わず多くの支持を得ており、全国で講演多数。著書に、『指の魔法 奇跡のきくち体操』(集英社インターナショナル)、『はじめての「きくち体操」』(講談社+α新書)、『あぶら身がすっきり取れるきくち体操』(KADOKAWA)、『寝たままできる! 体がよみがえる!! きくち体操』(宝島社)など多数。