「私は体が硬いもので」「歳のせいかめっきり体が硬くなって」などと嘆く人は多い。確かに硬いより柔らかいほうがいいような気がするが、実際のところ体が硬いとどのような不都合があるのだろうか。そもそも体のどこがどのように硬いのだろうか。
体の「柔軟性」という言葉があるように、柔らかさの定義を調べたほうが話が早そうだ。厚生労働省によれば、柔軟性とは「筋肉と腱が伸びる能力」のことで、筋力、瞬発力、持久力、調整力とともに基本的な運動能力のひとつとされている。つまり体が硬いということは、筋肉と腱が伸びる能力に欠けるということである。
体力テストの「前屈」の意味
柔軟性は代謝や血行に影響する
柔軟性には「静的柔軟性」と「動的柔軟性」がある。静的柔軟性はいわゆる体の柔らかさで、一般に柔らかいほど普段の生活でのケガが少なく、疲労も回復しやすいとされる。動的柔軟性は体の動かしやすさ、つまり運動のしなやかさのことで主に競技能力に関わるものだ。言い換えれば、体が硬いと動作が不自由なだけでなくケガをしやすく、疲れやすいということになる。また体が硬く緊張状態にあると代謝や血行が悪くなりやすい。つまり腰痛や肩こりなどの不調や、免疫や代謝などあらゆる体機能の低下につながるとの説もある。
体力テストの立位体前屈で体を深く曲げられたとして、「それに何の意味があるの?」とお思いの人もいるかもしれないが、柔軟性が高いということには大きな意味があるわけだ。
前述のように体の柔軟性は「関節可動域」により左右される。関節可動域とは字面のとおり、体の各関節が自然に動くことのできる範囲のことで、「骨格構造」と「軟部組織(筋肉や関節など)」によって決まる。骨格の構造は生まれつきのものであり、努力によりどうにかなるものではないが、体の組織なら変えることはできる。
関節可動域を変えるための手段がストレッチ運動だ。私たちはストレッチをすると関節が動きやすくなったり、筋肉が伸びやすくなること、運動前や後のストレッチが大切であることを経験から知っているが、もともと筋肉や関節の柔軟性を高めるための運動なのである。