赴任から10年。「うちのシステムは日本一」と言い切れるまでに育て上げた今、小林先生の目にはさらなる目標が映っている。

「兵庫県と鳥取県の日本海沿岸を1つのエリアとする、効率的な医療体制作りを行政とともに進めています。鳥取にもドクターヘリが導入されたので、うちのヘリと合わせてうまく使い、この分野は豊岡で、こちらの分野なら鳥取で、というように病院間で医師の配分や患者さんのシェアなどを進めていきます。この先、日本の人口は右肩下がり。近隣と手を組んでいかなければ、地域医療は必ずつぶれてしまいますから」

 2018年度以降、鳥取県ドクターヘリ事業(基地病院:鳥取大学)の立ち上げ支援、鳥取県立中央病院(救命救急センターを有する)への救急医派遣・研修の実施といった準備を着々と進め、20年度からはいよいよ救急医派遣(特に夜間の重症外傷例)を含めた人的交流を本格始動させるという。さらに行政とも、救急医育成を協働で行うプロジェクトを立ち上げる。

 地域の救急医療をここまで考え抜き、戦略的に動いている医師がほかにいるだろうか。

「僕が考えるようなことは、センター長を務めるくらいの救急医であれば、皆考えていると思いますよ。救急医療は社会学。地域全体を見られなければ務まりません。それぞれの地域に応じたものを、ちゃんとマーケットリサーチして、必要な医療を提供していくことが、これからの日本には必要です。そういう意味で救急医療は地場産業でもある。

 但馬でできていることは東京ではできないし、東京の医療はここではできません。それぞれに応じた正解を作っていくことが必要です」

◎小林誠人(こばやし・まこと)
公立豊岡病院 但馬救命救急センター・センター長。1994年鳥取大学医学部卒業、同第1外科(一般・消化器外科)入局。以降、兵庫県災害医療センター救急部副部長兼集中治療室室長、大阪府済生会千里病院千里救命救急センター・ICU室長兼救急副部長等を経て、2010年1月から現職。