中国の小民族に通信が
もたらした劇的な変化
最近読んだ中国関連のニュースのなかで非常に印象に残ったのは、中国通信事情に関するある報道だ。その記事はインターネットが山奥に住む少数民族の日常生活に激変をもたらしたことを紹介している。それは次のような内容だ。
中国とミャンマーの国境付近では、中国で人口が比較的少ない少数民族の1つ「トーロン族」が、山を背に川に臨み生活している。その場所は深い山と深い谷のところにあるため、長い間、世間とは隔絶され、原始社会のような焼畑農業で暮らしていた。
高黎貢の雪山は1年中雪で閉ざされ、独竜江郷は1年のうちの大半は外界とほとんどつながりを持たない。村人たちもそれぞれ「山頂」に散らばって住んでいるため、これまでは重要な話し合いがあれば「爆竹を鳴らして伝える」ことしかできなかった。
2004年に電話が開通し、2016年に4Gのネットワークが敷かれてから、村人たちはインターネットを通じて果物や薬草を販売できるようになっただけでなく、さらに英語を学習したり、医療専門家に遠距離診察を頼んだりしてきた。まさにインターネットの登場で、トーロン族たちは現代文明を受け入れる環境ができたといえよう。
一方、インターネットなどの通信分野を司る工業情報化部の統計データによると、2019年7月までに中国の4G通信基地局はすでに456万カ所を超え、世界一となった。現在、中国は世界規模で最大の情報通信網をすでに構築し、全国で98%の行政エリアに光ファイバーと4Gネットワークが通じている。
辺鄙な山奥にまで通信網が敷かれていることについては、十数年前に、私がすでに身をもって体感してきた。
2007年、私は13回に分けて放送されたNHKのドキュメンタリー番組『NHKスペシャル 大型シリーズ『激流中国』」の第9回 「上海から先生がやってきた~貧困の村で~」の取材を担当していた。2008年3月2日に初回放送したこの番組を取材するために、私は雲南省の山間部と中国西北部、甘粛省に近い寧夏回族自治区の西吉県を、1カ月以上歩き回った。特に、西吉は農民の年収が1000元(当時の為替レートでは約1万5000円)前後で、中国政府も認める最貧困地域だった。