『週刊ダイヤモンド』11月30日号の第1特集は「歯医者のホント」です。歯医者の世界は、構造変化の只中にあります。それを象徴するのが、日本で広がりつつある米国発のマウスピース型矯正ビジネス。価格破壊で業界を大きく揺るがす勢いです。日本の歯科業界は問題がまさに山積しています。「賢い患者」をめざす読者のために、知られざるホントを明らかにしていきます。
“日本の医者飛ばし”
マウスピースビジネスの破壊力と落とし穴

“黒船”が襲来した──。日本の歯科矯正の世界ではこの数年、このような表現にふさわしいような地殻変動が起こっている。キーワードは「マウスピース矯正」。震源は米国だ。
その先兵は米アライン・テクノロジーが展開する「インビザライン・システム」。米国で蓄積された患者のビッグデータを用い、透明な樹脂製で取り外し可能な「アライナー」と呼ばれる装具を販売する。
日本ではワイヤー矯正で、口元から金具がのぞくことを嫌がる患者も多い。片や、マウスピース矯正は装具が目立たない。審美性を求める患者、もうけたい医師のニーズが合致する。そんな構図を見透かす形で、業者側も歯科医に猛烈な売り込みを掛けているのだ。
同様の商品では他に、米国発のスマイルトゥルー。3Dデータを使って「診断・設計は米国、製作は日本」を掲げる同社サービスには、あの三井物産が歯科技工所と組んで30%を出資。大手商社が参入を果たした。
さらに米国では、自宅で歯列矯正できるマウスピース矯正のキットを直接患者へ販売する新興企業「スマイルダイレクトクラブ」が今年9月、ナスダック市場へ上場した。診断の段階から歯科医を通さない“完全医者飛ばし”スキームを築き、医師側の猛反発を受けながらも急成長している。