生物とは何か、生物のシンギュラリティ、動く植物、大きな欠点のある人類の歩き方、遺伝のしくみ、がんは進化する、一気飲みしてはいけない、花粉症はなぜ起きる、iPS細胞とは何か…。分子古生物学者である著者が、身近な話題も盛り込んだ講義スタイルで、生物学の最新の知見を親切に、ユーモアたっぷりに、ロマンティックに語る『若い読者に贈る美しい生物学講義』が11月28日に発刊された。

養老孟司氏「面白くてためになる。生物学に興味がある人はまず本書を読んだほうがいいと思います。」、竹内薫氏「めっちゃ面白い! こんな本を高校生の頃に読みたかった!!」、山口周氏「変化の時代、“生き残りの秘訣”は生物から学びましょう。」、佐藤優氏「人間について深く知るための必読書。」と各氏から絶賛されたその内容の一部を紹介します。

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『モナ・リザ』を描いた理由

 地球は生物がすんでいる惑星だが、地球そのものは生物ではない。でも、地球を生物だと考えた人は、昔からたくさんいた。どうやら地球は、生物に似ているらしい。では、地球のどこが生物に似ているのだろう?

 500年ほど前のイタリアに住んでいたレオナルド・ダ・ヴィンチも、地球を生物(あるいは生物に限りなく近いもの)と考えていた一人だ。レオナルドは観察と実験という科学的な方法を、時代に先駆けて実践した。そして、500年後の現在でも通用する成果をいくつも残した(そのうちの一つは後で紹介する)。しかし、残念なことに、レオナルドの科学における成果は、人類の科学の発展にまったく影響を与えなかった。

 レオナルドの成果は、彼が書き残した数千枚にもおよぶノート(レオナルド・ダ・ヴィンチ手稿と呼ばれる)に残されている。ところが、それらの手稿は長らく秘蔵されていて、公開されなかった。少しずつ出版され始めたのは、十九世紀になってからである。しかし、初めは断片的なものが散発的に出版されただけなので、その内容がすぐに世間に知られたわけではなかった。

 そうこうしているうちに、人類の科学は、レオナルドの手稿とは無関係に発展していった。そして、レオナルドを超えてしまったのだ。

 このようにレオナルドは、科学者としては運がなかった。しかし、画家としては、最高の評価を手に入れることになった。中でも『モナ・リザ』は、西洋絵画の最高傑作とさえいわれている。

 この『モナ・リザ』をレオナルドが描いた理由の一つは、地球と人間が似ていることを示すためだった。『モナ・リザ』には、女性と地球(の一部)が描かれている。

 たとえば、女性の曲がりくねった髪の後ろには、曲がりくねった川が描かれている。わざと両者を対比させて描いたと、レオナルド自身が手稿に書き残している。人間と地球という二種類の生物を、一枚の絵の中に収めたのだ。