人事大激変!第2回
Photo:Aerial3/gettyimages

社内エリート集団といわれた人事部だが、今やその権威は見る影もない。なぜ、人事部のパワーが落ちてしまったのか。特集「人事大激変!あなたの評価・給料が危ない」(全12回)の第2回では、その理由を「タテとヨコの民主化」「働き方地獄」「人事マフィア」の三つの視点から解説する。

「週刊ダイヤモンド」2019年5月11日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの

人事部が信用されなくなった理由(1)
労働環境の激変:タテとヨコの民主化

 労働ビッグバン――。これは、遡ること13年前、第1次安倍政権時代に経済財政諮問会議の場で提唱された労働市場改革の総称だ。

 この改革は、働き手が生産性の高い分野・業種へ円滑に動きやすくできる仕組みや、年功ではなく職種によって処遇が決まる労働市場を整備していこうという、極めてまっとうな考え方のはずだった。

 だが、議論を深めるのに使ったキーワードや、規制緩和論者の強引な理論による誘導がよろしくなかった。

 とりわけ、労働市場を“流動化する”という表現に対して、野党だけでなく、世間までもがかみついた。流動化などと、「人をモノのように扱うとは何事か」との批判である。

 加えて、残業代ゼロ法案との悪名が付いてしまった「ホワイトカラーエグゼンプション(労働時間規制の適用除外)制度」の取り下げとともに、職種別の労働市場創設の芽は摘まれてしまった。

 それから13年――。政府も世間も変われば変わるものだ。今や同じ安倍政権が、職種に特化したスペシャリストが対象の「ジョブ型雇用」を推進している。

 日本的な「メンバーシップ型雇用」が勤続年数など年功で評価されるのに対して、欧米型のジョブ型雇用は仕事で評価される。

 ジョブ型雇用は、企業と働き手が雇用契約を結ぶ際に、「ジョブディスクリプション(職務記述書。JD)」を交わすことが一般的で、そのJDに記されたものが仕事の中身となる。要するに、政府は職種別の労働市場の創設を歓迎しているということだ。

超売り手市場と事業部の権限拡大が
人事部を転落させた

 政府のスタンスが百八十度転換し、さらに、そのブレた姿勢に世間から批判が巻き起こらないのはなぜか。その背景には、二つの労働環境の激変がある。

 それが、「タテの民主化(労働市場の激変)」と「ヨコの民主化(企業組織の激変)」だ。

 タテの民主化とは、労働市場が企業に有利な買い手市場から、働き手に有利な売り手市場へ様変わりしたことが起点になっている。

 求職者1人当たりに何件求人があるのかを示した有効求人倍率は、1.63倍と約45年ぶりの高水準にある。特に、新卒など若年層や、高度人材に企業の人気が殺到しており、働き手の権利意識が高まっているのだ。

 逆に言えば、企業が欲しい人材のマーケットプライスが高騰し、これまで採用を一手に引き受けてきた人事部の募集力、採用力が著しく低下している。

 次に、ヨコの民主化である。企業は勝つために、エース級人材を稼ぐ事業部に投入している。従来は、社内エリート集団だった人事部だが、徐々に人事権などの権限やパワーが人事部から事業部(現場)へシフトしている。

 採用や評価の基準を、社内ではなくて、同じ職種の外部労働市場に求めるようになってきている。早い話が、人事部ではなくて、事業部が職種に特化したスペシャリストを採用、育成するようになっているのだ。

 タテとヨコの民主化の行き着く先は、人事部の権威失墜である。