河川の上流部に建設されるダムは、集水域に降った雨水を貯水できるだけで、中下流域に降った雨には対応できない。また治水効果はダムから遠ざかるほど減少し、中下流域(平野部)での効果は限られる。

 たとえば2015年9月の鬼怒川水害では、上流に国交省管理の大規模ダムが4つもあったにもかかわらず、下流の茨城県常総市で堤防が決壊し、堤防のない箇所からの溢水もあって甚大な被害を生んだ。

 今年の台風19号については、国交省関東地方整備局が11月5日、利根川の上流の7つのダムの治水効果(速報)を発表した。

 それによると、八ッ場ダム(やんばダム、群馬県長野原町)や下久保ダム(群馬県藤岡市・埼玉県神川町)など7ダム合計で1億4500万立方メートルを貯水した結果、上流と中流の境目にある観測地点(群馬県伊勢崎市八斗島〈やったじま〉)では、水位をダムがない場合に比べて約1メートル下げたと推定されるという。

 実際、利根川の水位は八斗島地点では氾濫危険水位を超えなかった。

 しかし、中下流域に対する上流ダム群の治水効果は不明だという。利根川中流の観測地点(埼玉県久喜市栗橋)では最高水位が9.67メートル(基準面からの高さ)に達し、一時は氾濫危険水位の8.9メートルを超えた。

 ただ、堤防はこの地点では氾濫危険水位より約3メートル高く造られており、氾濫は免れた。氾濫を防いだのは上流のダムではなく、堤防だった。

流量調節機能を失う場合も
危険が大きい緊急放流

 ダムによる治水では、満杯になると洪水調節の機能を失うというもう一つの欠点がある。

 堤防を守るために、流入した水量と同量を放流する「緊急放流」が行われるのだ。だがこの場合、自然界では起こり得ない流量の急上昇が起き、避難が難しい。

 たとえば昨年の西日本豪雨では、愛媛県の肱川(ひじかわ)で2つのダムの緊急放流が行われ、西予市と大洲市ですさまじい被害を出した。

 今年の台風19号では関東と東北の6つのダムで緊急放流が行われ、幸い水害は起きなかったが、ダム下流の人たちは右往左往させられた。

 利根川上流の7ダムでは、下久保ダムが緊急放流の可能性があると関東地方整備局が発表していた。結果的に回避されたが、ダムは一時、ほぼ満杯になっていた。