(1)会議
まず、会議である。重要なプロジェクトや案件は基本的に会議での承認を要求することになっている。しかし、組織のヒエラルキーの上位者が主張することには、社内での力関係があるので、下の者はなかなか口を出せないのが現実だ。
そもそも、あなたがそのプロジェクトの担当者ではないならば、会議の席で「ノー」と言うことのメリットは何一つない。言っても、担当者や関係者に嫌われるだけだ。仮にあなたが反対したことでそのプロジェクトが中止になり、そのおかげで会社が損失を免れたとしても、やっていないものについて、損失を免れたことの証明はできないし、それをしたほうがよかったのか、やらなかったからよかったのかということは誰にもわからない。あなたに対して恨みを持つ者を作るだけだ。
したがって、反対して失敗プロジェクトを未然に防いだとしても、それは成果として認識されない。賛成するなら、その人の覚えがめでたくなるというメリットはあるが、「やめたほうがいい」と主張することの個人にとってのメリットは何もないのだ(たとえ、あなたの反対意見が会社を救ったとしても)。
むしろ派閥があって、相互に対抗し合う関係ができているほうが、間違った意思決定はストップできる。ただ問題は、そうしたけん制が単に相手の足を引っ張るために行われるものであることだ。要するに、「正しいことをするための批判」ではないから、間違った意思決定は防げるかもしれないが、正しい意思決定もできないということになる。
そうなると第三者である社外取締役を入れて……といった話になりがちだが、社外の人を入れるような会議では問題点があらわにならないようにしっかり偽装、あるいはカモフラージュされるから、これも機能しづらい。しかも、くだんの広告表現に関するような意思決定はそのような会議では話し合われないのが普通だろう。
(2)専門家チェック
中立で公正な弁護士、会計士、各種コンサルタント(たとえば広報のコンサルタント)など、その道で権威のある人に事前にチェックをしてもらい、問題がないかどうか聞く、というのも一般的に行われている方法である。しかしながら、この場合においても形式に流れ、実質的にチェックが行われない。もしくは、専門家の指摘が改ざんされて伝わることが多い。