(5)大物OBのしん言
ほぼ最後の手段となってしまうが、その会社の先代社長など大物OBに状況を報告して、その人から社長を諭してもらう方法がある。プロデューサー、デザイナーなら、その人たちの尊敬する師匠筋の人に頼むということもあるが、最近はこれらの干渉の力も弱まっている。
以前は、大物OBは強い影響力を持っていたが、それゆえに企業は変化できないという大きな問題を抱えてしまっていた。そのため、現在はOB等の影響力を排除することが行われ、現トップへの影響力を持つ人は少なくなっている。会社の相談役も一掃され、OBの出る幕はなくなってしまっている。
そして、取締役会も社外取締役も基本的に社長が選んで指名していることが重要だ。特に社外取締役が「社長派」の場合、形式的には第三者のお墨付きが得られてしまい、その意思決定は外部者によってさらに正当化される。ここにも抑止力が働く余地が少ない。
このように、組織における抑止機能がおしなべて不全なため、問題行為であっても上位者がその気になれば、組織内で十分に行い得る状況になっている。
とはいえ、組織はこのような失敗を阻止しなければならない。そのためには、事前に防御できなかったとしても、起こしてしまった失敗については、しっかりと振り返って検証し、同じ轍を二度と踏まないようにするくらいはしたいものだ。
「失敗学」の畑村洋太郎氏は、失敗の起こり方を分類し、体系化、構造化した「失敗まんだら」を作った。これを見ると、組織の失敗を「どのように収めるか」のヒントが見えてくる。
なぜ失敗したのか
失敗の「原因」を考える
「失敗まんだら」によると、その責任の所在で、失敗の原因を分類することができる。
まず、「誰の責任でもないもの」として“未知”が挙げられる。今でいえば、AIの爆発的進化による影響、未曽有の大災害などだろうか。
もう少しマイルドに「個人・組織のいずれの責任にもできない原因」としては、“環境変化への対応不良”がある。新しい企画を始める際に想定する外的条件が時間の経過と共に変わってしまい、その変化に十分対応できないなどだ。