世界史と日本史が「繋がる」瞬間が面白い

本村:さっき、本郷先生が江戸の話を持ち出したから言うんじゃないけど、やっぱり日本史の中の江戸時代と古代ローマって、ものすごく似ているんだ。

本郷:そうですか?

本村:比較しうる対象なんです、水に対する清潔感とか。古代ローマでは水源地から水を引いてきて、上水道が整備されていた。

本郷:ええ、江戸にも玉川上水からの上水道がありました。

本村:銭湯が普及していったところも似ていますよね。それからローマではめちゃくちゃサトゥラ、要するに「風刺詩」がはやったわけだけど……、江戸でも川柳なんかがはやったわけじゃない。ちょっと斜に構えて世の中を見る姿勢が似るって、面白いよね。

本郷:本村先生が言われたみたいに、江戸時代のいわゆる「洒落のめす」風刺文化というのはおもしろいですよね。彼らは命がけでやってたから。寛政の改革とかのときに好き放題言って処罰されちゃった山東京伝とか、講談でお上批判をやって首を斬られちゃった馬場文耕とかね。僕は、ネットで炎上したときなんかは「僕なんかまだまだ」と彼らのことを思い出しています(笑)。

本村:ははは。

日本史は段階的、世界史は断続的

本郷:それにしても、どうしても僕なんかは、世界史でいう「ローマにあったものが、そのあと無くなっちゃう」というのがよくわからないです。

――そうですね。日本史は、段階的に発展してきている感じがします。

本村:うん、世界史の場合、いろんな要因があって、なかなか発展を継承するのは難しいね。たとえばローマ人なんか二カ国語を読み書きできるのがふつうでしたけど、その後の中世の王さまたちはほとんど文字を書けなかったと言われています。

――そうなんですか?

本村:もちろん文字を書ける人がいなかったわけじゃなくて、書ける人に手紙を代筆してもらったりしていたら、そういう能力がガタッと落ちちゃったの。

本郷:やっぱり世界史くらい歴史が長いと、そんな簡単なものじゃないなというのがわかって、面白いですね。

本村:そうですよね。二世代ぐらい欠けちゃうと、もうできなくなるんだよね、伝承って。そうとう意識して、やっていないかぎりね。

本郷:そうすると、結局、やっぱり僕たちの日本という国は、いいか悪いかは別として、天皇陛下の即位というのがずっと伝承されてきたわけだけど、そういう伝統があるのが当たり前みたいに思っていますよね。そうなると、古文書とかも残ってるのが当たり前と思っちゃうんですよ。だけど、外国に行くと、「え!あるの?」と言われるんだよね。ないのが普通なの。それを考えると、やっぱり世界史、学ぶ必要があるよなと思います。比較というのは、すごい大切ですよね。

――なるほど。日本史と世界史、それぞれを学んで初めて見えてくるものがあるのですね。『やばい日本史』『やばい世界史』は気軽に比較をするのに向いているかもしれません。

本郷:ええ、まずはこのような入門書から入ってみてもいいと思いますよ。