糖尿病は、失明や腎臓病、心筋梗塞を引き起こす怖い病気です。中年を過ぎると発症する確率が非常に高くなるため、注意しなければいけません。糖尿病といえば、太っている人がかかる病気というイメージがありますが、必ずしもそうではないことをご存じでしょうか? 厚生労働省の調査によると日本の糖尿病患者は1000万人を超え、糖尿病予備群とされる人の数は1000万人に上るといわれています。では、どうすれば糖尿病は防ぐことができるのでしょうか? 糖尿病になってしまったら、どのように対処すればいいのでしょうか? 横浜市立大学大学院医学研究科循環制御医学教授である石川義弘医師が解説します。
糖尿病で血管がボロボロ
失明、腎不全、心筋梗塞のリスクに
糖尿病とは、血中の糖の割合が高くなる病気です。ただ、血中の糖の割合が多少高くなること自体は、怖いことではありません。糖尿病が引き起こす臓器障害こそが怖いのです。
糖尿病が進むと血管が砂糖漬けになってボロボロになります。血管障害が目に起これば糖尿病性網膜症になって目が見えなくなりますし、腎臓に起これば糖尿病性腎症で腎不全になります。心臓に起これば心筋梗塞になります。糖尿病は日本人が失明する原因の上位を占めていますし、人工透析の原因の1位も糖尿病です。
しかし、糖尿病の初期の段階では何も症状がありません。尿に糖が出たり、のどが渇いたりするくらいですから、おそらく仕事や日常生活に何の影響もないでしょう。だからこそ、怖い病気だといわれているのです。
糖尿病の原因は欧米型の食事
糖尿病の治療には、インスリンを使用します。インスリンとは、すい臓で分泌されるホルモンの一種で、血液中の糖分を筋肉へ送りこんでエネルギーとして利用します。子どもに多い1型の糖尿病は、免疫の異常によりインスリンを作る細胞が壊れてしまう病気で、最初からインスリン注射が不可欠です。肥満などが原因の2型の糖尿病は、生活改善や経口薬で血糖値を十分にコントロールできなくなった場合にインスリン注射を併用することになります。
日本人は太っていなくても糖尿病になりやすいといわれていますが、それは日本人のインスリンの分泌量が欧米人に比べると多くないからです。それなのに欧米人のようにハンバーガーやポテトフライなどを急にたくさん食べる欧米型の食事が普及するようになって、肥満や栄養過多の人が増えてしまいました。