インスリンは、すい臓の中にある特殊なインスリン分泌細胞(β細胞)で作られており、糖を筋肉に取り込ませて血糖値を下げる働きがあります。健康なときは十分な量のインスリンが分泌されますが、血糖値が高い状態が続くと、増えてしまった糖を筋肉に取り込むために、さらにたくさんのインスリンが分泌されるようになります。

 ところが、そのうちにβ細胞はインスリンを出すことに疲れてしまい、だんだん分泌が落ちてきてしまいます。インスリンの分泌が落ちているのに、糖をたくさん摂取し続けていると、糖は筋肉に取り込まれなくなり、多量の糖が血液中に流れることになって、血管が砂糖漬けになります。これが糖尿病です。

 糖尿病には遺伝も関係しています。特に両親が糖尿病の人は注意しなければいけません。40~50代のビジネスパーソンの親世代の人たちは、今よりも圧倒的に健康に良い暮らしをしていました。ハンバーガーを食べる機会も少なかったですし、階段を使うことも多かったことでしょう。つまり、今は遺伝に加えて、糖尿病になりやすい環境にあるのです。糖尿病を避けるには、生活習慣に気をつけつつ、適度に運動して、太り過ぎない、食べ過ぎないようにしなければなりません。

糖尿病は健康診断で見つけよう
HbA1cが6.0を超えたら即改善を

石川義弘医師石川義弘医師
横浜市立大学大学院医学研究科 循環制御医学 主任教授
エール大学医学部留学を経て横浜市立大学医学部卒業。マサチューセッツ総合病院科研究員、コロンビア大学、ハーバード大学医学部助教授、ラトガース大学医学部教授・同付属病院指導医(循環器内科)等を経て現職。日本および米国医籍登録(ペンシルベニアおよびニュージャージー)。病気についての正しい知識をやさしい言葉で紹介する「Open Doctors」の監修医師も務めている。

 糖尿病は初期症状があまりないので、なかなか気づくことができません。尿に糖が漏れて甘い匂いがするという徴候もありますが、わかる人はそう多くありません。かつては立ち小便をしたらアリが寄ってきたので糖尿病に気づく、ということもありましたが、今は立ち小便をする人なんていないでしょう。

 糖尿病かどうかを判断するには、健康診断を受けてチェックするのが一番です。糖尿病は健康診断でわかる血糖値と尿糖とHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の数値で判断します。健康診断で血糖値と尿糖とHbA1cの数値が一つでも基準値を超えたら、病院で再検査してもらうことをおすすめします。たまたまそのとき、砂糖などの取りすぎで血糖値が上がってしまうこともあるので、複数回検査したほうがよいでしょう。

 HbA1cの数値が6.0を超えたら異常値です。とはいえ、この段階なら薬を飲まなくても、ダイエットや運動、食事を控えたりすることで十分改善が期待できます。赤信号の数値は6.5。7.0を超えたらかなり真剣に対処しないといけません。

 健康診断で発覚する糖尿病なら、薬を飲んでコントロールできることが多いといえます。しかし、糖尿病が進んでいることに気づかずに心筋梗塞などを引き起こしてしまうと、入院も必要になるし、仕事から離れる期間も長くなる。なにより寿命が短くなってしまう。つまり、治療に大きなお金がかかります。