プロが選ぶ神対応は?
適切な情報開示とタイミングが鍵

 最後に、「よかった謝罪会見」について聞いてみた。悲しいかな、「該当なし」の回答も少なくなかったが、被害や臆測の拡散を最小限にとどめた学び多き事例を、結びとして紹介したい。

 宇於崎氏は、今年5月に散歩中の保育園児と職員が交通事故に巻き込まれ、園児2名が死亡したことに対する滋賀県大津市・レイモンド淡海保育園の対応を挙げた。「素早い情報公開、的確かつ粘り強い報道対応により、世間の理解と支援を得ている」と評価する。事件や事故に対する対応というと、加害者に注目がいきがちだが、「被害者側も油断はできない」と宇於崎氏。「適切な情報公開や説明をしないと、被害者側にも落ち度があったのではないかと疑いをかけられることがある」(宇於崎氏)。

 浅見氏は、LIXILの株主総会後の会見を挙げた。創業家の潮田洋一郎氏とのグループの経営権を巡る騒動の末、前最高経営責任者(CEO)の瀬戸欣哉氏の復帰が決まった株主総会後の会見だ。長期にわたってさまざまな報道が飛び交う中で、LIXILの行く末に不安を覚えた株主も少なくなかっただろう。「瀬戸氏は、潮田氏との経営権争いを制した株主総会当日に『これからは一つのチームになる』と強調した。外部からの不安を払拭して、信頼回復にも役立てた効果的な会見だった」(浅見氏)

 また、今年の会見ではないものの、2015年6月に行われたトヨタ自動車の豊田章男社長の会見を挙げたのは、風間眞一広報事務所・風間眞一氏。「トヨタ自動車の役員・麻薬密輸容疑で逮捕」という報道を受けてのものだった。「さまざまな臆測が飛びかねないなか、『私自身が説明することが大切』との意思表示は、情報の独り歩きを制するに十分だった。また、発言内容も前日発表された会社声明の枠を超えない慎重さで、イメージの悪化に先手を打った点は評価できる」(風間氏)

 企業不祥事以外にも、悲惨な事件や自然災害など、さまざまな予期せぬ出来事が発生する。「備えあれば憂いなし」とは言い切れない昨今だが、有事に対する向き合い方が企業にとっては命取りになることが改めて明らかになった一年だった。

<アンケートの回答者一覧>
・SOMPOリスクマネジメント 危機管理コンサルティング部・広報チームリーダー 五木田和夫氏
・エンカツ社 代表取締役社長 宇於崎裕美氏
・ピーアール・ジャパン 代表取締役社長 中村峰介氏
・大森朝日事務所 代表取締役 大森朝日氏
・山見インテグレーター 代表取締役 広報・危機対応コンサルタント 山見博康氏
・アサミ経営法律事務所 代表弁護士 浅見隆行氏
・アズソリューションズ 佐々木政幸氏
・風間眞一広報事務所 代表 風間眞一氏
・ループス・コミュニケーションズ 福田浩至氏
・東北大学特任教授/人事コンサルタント 増沢隆太氏
・関西大学社会安全学部 教授 亀井克之氏
・エイレックス 代表取締役/チーフコンサルタント 江良俊郎氏
・広報コンサルタント 石川慶子氏
以上 13名(順不同)