『外資系で自分らしく働ける人に一番大切なこと』は著者の宮原伸生さんが、日本企業を飛び出し、ベネトンスポーツ、日本コカ・コーラ、LVMH(モエヘネシー・ディアジオ)、ケロッグ、GSK(グラクソ・スミスクライン)などで、もがきながら見つけた「新しい働き方」を紹介する本です。そのエッセンスをコンパクトに紹介します。

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面白いストーリーを語れますか?

コミュニケーション力の重要性をあらためて認識したエピソードがあります。ある外資でこんなことがありました。

将来のトップリーダー、ジェネラル・マネジャーになるようなポテンシャルを持った人を十数人選抜し、育成していくプログラムで、日本からも20代後半の若手社員が選ばれました。

このプログラムに参加すれば、ホップ・ステップ・ジャンプで一気にポジションが上がっていく可能性がある。そして、その第1回目のミーティングが、アジアのある都市で行われました。

若い日本人もやる気満々で参加しました。ところが、3日間のワークショップが始まると、初日のレセプションで大きなショックを受けてしまいました。ほかのメンバーのコミュニケーション・スキルが圧倒的だったからです。そして、せっかく選抜されたのに、途中で抜けて日本に帰国してしまったのです。英語の問題もあるとは思いますが、それを除いたとしても、ストーリーを語れないことが大きかったのではないかと私は感じました。

端的に言えば、コミュニケーション力とは、自分の言葉で語れるかどうかなのです。それによって説得力は圧倒的に変わります。おそらく、他の国から来たポテンシャルの高い社員たちは、このスキルがとても高かったのでしょう。だから、少し話をしただけで、とてもかなわないと考えてしまった。

圧倒された要因として想像できるのは、まず「自分の話を聞いてほしい」という意欲の高さです。外国人の場合、たとえ英語が下手でも、「聞いて、聞いて、面白いストーリーがあるから」というところからスタートする。大丈夫かな、英語はあまりうまくないし、外国人向けに話せるかな、といった消極的なところからはスタートしません。実際、これでは素通りされてしまいます。「聞いて、聞いて、自分のストーリーを聞いて」という姿勢を持っている人の話を、人は聞きたがるのです。

日本人は常に謙虚であろうとしますが、こういうときには思い切ること、大胆さが大切です。謙遜が卑屈になってはいけないと思います。

もちろん、これは単なる“アピール”“目立ちたがり”とは違います。聞いてくれる外国人がどんなことに興味を持っているか、どんなことを面白いと思うか、どんなことに響くか、ということを理解することも求められます。相手の心を響かせ、その人を惹き付けて心を動かしていくことが必要になるのです。

伝えて、巻き込んで、盛り上げていくのが今のリーダーシップの主流です。昔のようなヒーロー型のリーダーシップで、万能のリーダーがパワーで引っ張っていくという時代ではなくなっています。これは外資に限らず、日本企業でも同じではないでしょうか。