SVの評価尺度にこうした重点商品の売上高や発注数が関わってくることは業界では当然のことと捉えられている。無断発注の原因を報道陣に問われたSEJの永松社長は、「本部社員に売り上げなどのノルマは課していない」としながらも「数字に追われてプレッシャーがあったのではないか」と述べ、事実上ノルマの存在を認めた。ファミマでも各地区の責任者やSVに対し、加盟店の仕入れノルマが課されていたと考えるのが自然であろう。

 脱サラして開業したオーナーが、小売業の経験がない初心者であるのをいいことに、本部は店舗運営の方法をまともに教えることなく、実態を無視してひたすら商品を仕入れさせ、本部のノルマを達成するためだけに利用された――。

 少なくともこのオーナーはそう受け止めている。2人目のSVも無断発注を行っていたことから、こうした行為が組織的に常態化していた可能性も否定できない。加えて無断発注がなされた総額は、オーナー本人には未だに知らされていない。

 しかも本部とオーナーとのやり取りには、加盟店の苦情や問題提起を受け付ける「加盟店相談室」の担当者も同席している。ならば、澤田社長をはじめとした本部の中枢にもこうした事態は報告されていてしかるべきだ。しかし、澤田社長は冒頭のように、自社で無断発注はないと堂々宣言している。ファミマにおいてもガバナンスの深刻な機能不全に陥っていることは明らかだ。

 ファーストリテイリング副社長などを経て16年にファミマのトップに就任した澤田社長は、コンビニ加盟店の負担がクローズアップされた19年以降、本部の同意なき時短営業を認める方針を掲げるなど、大胆な加盟店支援策を打ち出している。本部に批判的な加盟店オーナーの間でも、その手腕に期待する声がある。

 SVの人事評価や配置の見直しにも着手し、「加盟店に寄り添った支援」を標榜しているが、19年以降になされた、今回の本部によるオーナーへの“謝罪”の内容は、加盟店に寄り添う姿勢にはあまりに程遠い。

 ファミリーマート広報部は「社内で調査し、不正が確認できた場合は厳正に対処する」とコメントしている。

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